↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/33

再会

湿った空気が立ち込める荒野。荒れ狂うショクブツ達を背に、灰色のバイクが砂を巻き上げて疾走する。

ネモが拳を握りしめ、遠くのアランを見つめていた。

「……やはりカートは本当に」

血管が浮き、拳が僅かに震えた。

「これで……あいつらを追うすべはなくなった」

焦げた風が、ネモの呟きをかき消した。


灰色のバイクは砂を巻き上げ、崩れた外壁へ一直線に走った。

アランはアクセルを限界まで開き、裂け目へ突っ込む。

視界が開ける。内部は戦場だった。

変異したショクブツが地面を這い、構造物を引き裂き、人々が応戦している。



アランはバイクを操りながら戦場を駆け抜けた。

蔓が横から伸びるたびに身を傾け、破片を避ける。

青白い光が断続的に視界を染めた。

「ベック?」

ショクブツを切り倒す姿が見えた瞬間、ツタがバイクに絡みつく。

「しまった」

バイクが跳ね、アランは地面へ倒れ込んだ。


「……ッ」

頭を抑えながら周囲を見渡す。

負傷者の間をマコが走り回っている。

「久しぶりだな」

喧騒が一瞬だけ遠のく。

目の前で、ベックが手を差し伸べていた。

アランは肩をわずかに緩め、ベックの手を取る。



「そうか、俺がいない間にそんなことが……」 アランはそう言って短く息を吐く。

「ハンナを亡くしてから、シモンズは変わっちまった。」

わずかに疲れの滲むベック。

アランはキーを取り出す。

「……それが、あのシステムの鍵か。」

「あぁ」

乾いた風が、テントの布をわずかに揺らした。

「今のシモンズは危ねえ。あいつに渡したら、人を犠牲にしてでも実験を進める。」

険しい顔をするベック。

「あのシステムは軍事兵器として作られたものらしい……そのロックを解除して、本当にいいのか」

そう言いながら、アランはキーをしまう。

ベックは何か言いたげな表情をする。

ショクブツの残骸が風に揺れ、 テントの布が、ひらひらと舞う。

「お前に言わなきゃいけないことがある。」

ゆっくりと口を開くベック。

「実はタケ……」

ベックがそう言いかけた瞬間、激しい音が響いた。

テントの外で低い轟音。 砂を巻き上げながら、一機の小型機が着陸していく。

プロペラが止まり、静寂が戻る。


ベックとアランが外を見ると、機体から一人の男が降りてきた。

迷いのない足取りで、テントへ向かってくる。

その姿を見た瞬間、アランは固まった。

息が止まったように、ただ立ち尽くす。

ベックはアランの横顔を見て、わずかに眉を寄せた。

男は一歩近づく。

アランの口から、かすれた声が漏れた。

「……タケル……生きていたのか……」 タケルはその言葉を遮るように、冷たく言った。

「キーを渡せ。セレーネを救うには、それが必要だ。時間がない」

アランの肩が僅かに沈んだ。

「アラン!」

ベックが声を張った。

その一声で、アランはハッと目を見開く。

乱れた呼吸を整え、タケルを見つめるアラン。


「何があった」

アランがそう問いかけると、 タケルは面倒くさそうに息を吐く。

「セレーネが幹に取り込まれた」

ベックが息を呑む。

アランは一瞬だけ目を伏せ、すぐに顔を上げた。

「……あのシステムを使うのか」

「あぁ」

「あのシステムは未完成だ。装着者は確実に……」

「一定時間でショクブツに吸収され、死んでしまう。そんなことは知っているさ」

アランに被せるように呟くタケル。

アランはタケルを睨みつける。

「じゃあどうして」

「確かに、各地のショクブツを止める前に装着者は死ぬ。 だがセレーネを分離する指示ならば……」

そう言い、空を見上げるタケル。

「セレーネを救うために誰かを犠牲にするのか」

そう言ってタケルに駆け寄るアラン。

「状況が分かっているのか。セレーネだけじゃない。 ショクブツの変異を止めるためでもあるんだ」

タケルの言葉を聞き、胸ぐらを掴むアラン。 「だったら、各地の村人をショクブツが及ばない地域に避難させて、それから対策を考えれば」

「確かに標高二千メートル以上は、変異したショクブツでも追ってはこない。 だが、セレーネはどうなる」

「助けるさ。誰も犠牲にしない方法で。」

アランはタケルを見つめ、力強く言い切った。

その言葉を聞き、苛立ちを露わにするタケル。

「そうやって綺麗事を言いやがって。お前はいつもそうだ。 だが、肝心なところでいつも何もできない」

タケルはアランの腕を、軽く振り解いた。 「……あれから数年待った。その結果がこのザマだ。 時が経てば経つほど事態は悪化していく」 タケルは低く続ける。

「渡す気がないなら力づくで……」

そう言いかけたが、ベック達を見て、わずかに息を吐き引き下がる。

「またすぐに来る。その時は渡してもらう。 もし断れば──アンタ達を潰す」

タケルはテントを後にし、小型機で飛び立っていった。


塔の内部。

幹が激しく光を発している。

「なんだ、これは……」

幹から無数のツタが生え、塔の内部を侵食している。

シモンズはその光景を目にし、呆気に取られている。

「シモンズさん、早く脱出を。巨鎧の準備はできています!」

タツの叫び声が響く。

ショクブツの幹から伸びるツタは、這うようにして塔へ絡みついていく。

次第に、塔は太いツタに覆われ、巨大な幹へと変化していく。

巨大な幹のてっぺんには、ピンク色の蕾が一つ形成されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。