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再起

風と喧噪が削ったような荒れた町。

砂を踏む足音と、投げられた荷のぶつかる音が絶えない。

短い怒鳴り声と笑い声が、砂埃に混じって途切れなく響いている。

人々は、少しよれた薄汚れの服を着ている。

屋台で食事をしているカートとアラン。

カートは干し肉を頬張りながら地図を広げる。

「……おれたちが、めざすのは……ここだ」

「随分遠いな……」

アランは豆煮をスプーンですくいながら呟く。

「あぁ、長い旅になる。ざっと一年てとこかな」

「!? そんなに……」

「あぁ。順調に進めればの話だがな」

「シライとか言うやつが乗ってた、あれで行った方が良かったんじゃないのか」

下手に乗り物なんか使えば、野盗や妙な連中に狙われる。

命がいくつあっても、たりゃしない」

カートがそう言い終えると、突然、後方から声をかけられた。

「アンちゃん達、見ない顔だね。どこから来たんだい?」

鼻を赤くした酔っぱらいの男。アランの身なりをじっと見つめ、声色が変わる。

「……お前達、まさかグリーンハウスからじゃないだろな」

険しい顔で尋ねてくる。

「西の方からさ」

カートが軽く返す。

「西かぁ」

酔っぱらいは明るい声に戻り、表情も緩む。

「復興の方はどうなっている?最近、酒造工場が再開したとか……

うまい酒が飲めると期待してるんだが」

上機嫌のまま、畳みかけるように話してくる。

「悪いね。俺たち、最近目覚めたばっかりで……」

カートは爽やかな表情で言う。

「そうだったのか、悪いな……」

酔っぱらいは申し訳なさそうに頭をかいた。

「ここはグリーンハウスが近くてね。

一瞬、金持ちのクソ野郎共かと思っちまった」

そう言うと、酔っぱらいはカウンターへ戻り、豪快に安酒をあおり始めた。

「あんたら、町から出る時は気をつけた方がいいぜ。

俺たちが眠っている間に環境が変わっちまってな、

異常に進化した巨大生物がうじゃうじゃいやがる」

「ショクブツか……」

そう言いかけるアランだったが、カートが静かに止める。

そっと酔っぱらいを見るカート。

酔っぱらいは酔い潰れ、気持ち良さそうに眠っていた。


翌日。

テントなど、最低限の物資を買い揃え、町を出た二人。

背後の町は、もう砂煙の向こうに沈んでいた。

しばらく歩くと、地平線の砂が波打つ。

「……なんだ」

足元の揺れに気づき、アランが呟く。

巨大な影が、ゆっくりと砂を泳いでいく。

「下がれ!」

カートは、叫び、アランを強く押してつき離す。

砂が爆ぜ、巨大な生き物が浮上する。

魚類に似た外殻。

背びれが帆のように立ち、

砂漠を泳ぐように、一直線にこちらへ向かってくる。

アラン「……こっちに来てる!」

カート「走れ!」


二人は砂を蹴り、全力で走る。

砂の下から響く低い振動が、足元を揺らす。

「近い!」

アランは銃を取り出そうとする。

しかしカートはその手を抑え、銃を引っ込めさせる。

「振り返るな!」

巨大生物が砂を割り、尾のような影が地表を切り裂く。

砂煙が巻き上がり、視界が白く濁る。

「どこまで追ってくるんだ!」

二人は岩場へ飛び込み、身を伏せる。

巨大生物は岩にぶつかりそうになり、方向を変えて地中へ消えていく。

砂埃が静まり返り、風の音だけが残る。


アランは肩で息をしながら砂を払う。

カートは耳を澄ませ、しばらく動かない。

「……行ったか」

アランは、汗を拭いながら立ち上がる。

町の喧騒は遠く、

二人は無言のまま歩き出す。




塔の影が揺れ、薄い光を返す川。

その川辺には

ショクブツを蹴散らしながら突き進むベック達。

「シモンズが言ってた“異常反応”、この先だね」

狭苦しい車の中で、マコが苦しそうに言う。

「……ネモっすかね?」

タツは車から身を乗り出し、発砲しながら呟く。

「まぁ、行ってみりゃ分かるだろうさ」

ベックはハンドルを強く握り、アクセルを踏み込む。

ショクブツを吹き飛ばしながら突き進むベック達。


ショクブツを一掃し、

ベック達は日の照る荒野をひたすらに走っている。。

「セレーネ……絶対に連れ戻す」

アルが静かに呟く。

その後ろで、タツが心配そうにベックを見つめる。

タツは、塔で見た異形のベックを思い出していた。

「ねぇ! あれ!」

突然、マコが前方を指差して声を上げる。

その先には、黒く焦げ落ちたような村の跡が見えた。

ベックは村に入り、車を止める。


焦げ跡、引きずられた痕、影の残滓。

風が吹くたび、砂と灰が舞う。

「ひでぇな」

ベックが低く言う。

「これ、ショクブツじゃないよな」

そう言いながら

アルは周囲を見回す。

すると、かすかに呻き声が聞こえた。

物陰で子供が倒れている。

「おい!大丈夫か!」

タツが駆け寄り、子供を抱き抱える。

マコが水を渡すと、子供はかすかに意識を取り戻した。

「……あんたら……助けに……?」

か細い声。

「何があった。誰にやられた」

ベックが身を屈めて問う。

「……腕に……奇妙なものをつけた男の人……と、白い服の……女の子が……」

「どっちに行ったか分かるか?」

子供は震える指で村の外れを指す。

その指の先を、ベックが静かに見据えた。

「アラン……悪いが、待ってられねぇ」




視界の端まで白い平原。

足元は硬い氷が軋んでいる。

上空には、空蛇の群れが風を裂きながら旋回している。

「アラン!後ろ!」

カートが叫ぶと同時に

真下から低い唸りが響き

勢いよく、広がるようにひびが走る。

「次から次へと……」

眉間に皺を寄せ、身を翻すアラン。

氷を突き破り、

白い毛に覆われた巨体が姿を現した。

氷片を散らしながら立ち上がる

巨大なウサギのような獣。

カートは氷上を滑るように前へ出る。

「アラン、右に回れ!」

「分かってる!」

巨大生物の突進を、カートは横へ跳んでかわす。

アランは距離を取り、氷柱を蹴って位置を変える。

砕けた氷柱の破片が散り、白い霧のように舞う。

カートは巨大生物の死角に入り、銃に電池を込める。

「アラン!」

叫びながら銃を空へ放る。

アランは氷の段差を踏み切り、巨大生物の頭上へ跳ぶ。

宙で銃をキャッチし、そのまま引き金を引く。

巨大生物が吠え、氷原が震えた。


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