旅立ち
「なぜ、俺が旧時代の服を着ているか、気になるか?」
アランの疑いを察したように、カートは語りかけた。
それまでの砕けた口調とは違い、声には妙な重みがあった。
アランは思わず唾を飲み込む。
しかしカートは、そのまま力が抜けたように寝息を立て始めた。
あまりに唐突で、アランはしばらく呆然としたまま動けなかった。
その夜、アランは結局一睡もできなかった。
牢屋で一晩を過ごしたアランは、斜め向かいの男のことと、自宅の奥で見つけた汽車の安否が気になり、一睡もできなかった。
朝になると、中年の村人二人が粗末な朝食を持ってきた。アランは寝たふりをする。
村人は朝食を置きながら雑談を始めた。アランを心配しつつ、埋まっていた本でも見て旧時代のことを知ってしまったのだろう、と話している。
「素直に言えば、咎められることなんてないのに」と、不思議そうにアランを見つめていた。
そのとき、カートの牢屋から物音がした。
村人はかったるそうに朝食を差し出す。
カートは身振り手振りで感謝を伝え、美味しそうにパンを食べ始めた。
「なんでこんなやつ拾ってきたんですかね」
「一時の情だろう。旧時代の服を着ているが、幸い口がきけない。いくら旧時代を忌み嫌っていても、人殺しにはなりたくないからな」
そう言い終えた瞬間、カートが呟いた。「でも、俺ら2人を川に流して追い出すんだろ?」と呟く。村人は驚いた表情で「お前が喋ったのか⁉︎」と慌てふためく。カートは、朝食が乗っていたプレートを投げつけた。プレートは、見事に鉄格子を潜り抜け、村人二人の頭にぶつかった。
「でも、俺ら二人を川に流して追い出すんだろ?」
村人は驚き、「お前が喋ったのか⁉︎」と慌てふためく。
カートは朝食のプレートを投げつけた。プレートは鉄格子を見事にすり抜け、村人二人の頭にぶつかった。
倒れた村人から鍵を取ろうと、カートは鉄格子越しに手を伸ばす。
アランは「演技だけじゃなく、曲芸もできるのか?」と小馬鹿にしたように言う。
「まぁね」と明るく呟きながら、カートは自分の足枷を外した。
牢屋を出たカートはアランに鍵を投げ渡し、
「お前は、これからどうする?」と問いかける。
アランは眉間に皺を寄せた。
その問いに答える前に、突然、牢屋の外から悲鳴が響いた。
足枷を外し、アランとカートは牢屋から飛び出した。
村人が逃げ惑う先には、二匹のショクブツが歩いている。
ショクブツは村人を捕食しようとツタを伸ばすが、村人たちはギリギリでそれを躱していた。
パニックに陥った村を見つめ、アランは何かを決心したように自宅へ駆け出す。
自宅に着いたアランは、汽車が佇む隠し部屋から銃と電池をかっさらい、外へ戻ろうとした。
扉の前ではカートが待ち構えている。
「そんな物騒な物を持ってどこに行く気だ?」と尋ねるカート。
アランは、ショクブツを倒しに行くと即答する。
使い方は分かるのかとカートに聞かれ、面倒くさそうに知っていると答えるアラン。
するとカートは「仕組みじゃなくて、実戦での使い方だ」と問う。
余計なお世話だと言い放ち、アランは飛び出して行った。
アランは銃に電池を詰めながらショクブツへ突っ込んでいく。
2メートルほどの距離で銃を構え、引き金を引いた。
銃内の電池が発光し、アランは眩しさで目をつぶる。
次の瞬間、発砲の反動で3メートルほど吹き飛ばされていた。
起き上がってショクブツを見ると、体の半分を失いながらも機敏に動き回っている。
ショクブツは猛スピードでアランへ迫った。
アランは腕で顔を覆い、身を守ろうとする。
その背後にカートが現れ、手慣れた手つきで電池を入れ替えた。
片手で銃を構え、「出力調整も知らないのか?」と言い放ち、3発の光線をショクブツに撃ち込む。
ショクブツの肉片は蒸発し、跡形もなく消えていった。
放心状態のアランに対し、カートはドヤ顔を決めていた。
そんな二人を、村人たちが険しい目で見つめている。
「二人を捕えろ!」
複数の村人が叫び、農具を構えてジリジリと近づいてくる。
アランは村を守ったのは自分達だと主張するが、誰も耳を貸さない。
「そろそろ温まったかな……」
カートが呟いた瞬間、アランの自宅から汽車が飛び出し、こちらへ向かってきた。
「俺と行くか?」
カートが尋ねる。
アランはカートを見つめ、「行くしかないだろ」と短く答えた。
返答を聞いたカートは汽車に向かって走り出し、飛び乗るとすぐさまブレーキをかけた。
あっけに取られている村人たちの間をすり抜け、アランも汽車へ乗り込む。
汽車が動き出した瞬間、タケルの叫び声が聞こえてくる。
「アランッ……! 待てよ……!」
タケルは転びそうになりながらも体を立て直し、
泥を跳ね上げて汽車に手を伸ばした。
すかさずアランが腕を伸ばし、タケルは車内へ転がり込んだ。
「お前、どうして」とアランが驚いて問いかける。
タケルは汗を拭いながら「塔に行くんだろ?」と言う。
「どうしてそれを?」とアランは驚き尋ねる。
するとタケルは「お前の部屋に置いてあった」と言って懐から一冊の本を取り出す。
タケルは続けて言った。
「お前……そこのおっさんと一緒に、この村をショクブツから……いや、この世界を救いに行くんだろ?」
「おっさんじゃなくてお兄さんね」
カートがすかさず話を遮る。
タケルはアランの肩を叩き、「こんな怪しいおっさんとお前だけじゃ頼りないからな!」と笑う。
カートは燃え盛るボイラーに電池を投げ入れ、汽車を加速させた。




