第2話 初めての世界
まるで空気が伸び縮みしているようだった。
私は二人の少年に手を握られて(正確に言うなら私が握っている方かも…)そんな感覚を味わった。
そしていきなり視界がひらけた。
私の目の前に広がったのは…
今までいた世界と同じ世界とは思えなかった。
きれいな木々や花々のある庭の真ん中には、お城のような建物がそびえ立っている。
「・・・きれい。」
「あぁ、オマエよりもうんっときれいだな。」
見とれすぎて生意気男に反論するのも忘れていた。
「ここが俺たちが通う、レシラルフール学園だよ。これから君はここに通うんだ。」
「えっ!? まさかこの広い庭も、あそこにある城ほどはでかくないけどでかい建物も、全部レフールの敷地??」
「そうだよ。あと、あれは城じゃない。校舎だよ。あそこで勉強するんだ。」
ゆ、夢のよう…
これが世界的に有名なレシラルフール学園…。
私、こんなとこでやっていけるのかな…?
「不安そうだな。」
突然ハクラルが私の顔をのぞきこんできた。ち、近い…。
「ふ、不安にもなるわよ…。いきなりこんなすごいところで学べって言われても…」
「だが、約束したのだろう。」
そう、約束した。お母さんと別れる瞬間に。お母さんは帰って来いと言ったけど、やるべきことはちゃんとしてくるって。
「うん、がんばんなくちゃ!!」
「元気でてきたみたいだね。それじゃっ、まずは学園長のところに行こう!!」
「うん!!」
二人に案内されて、私はあの大きな校舎の最上階にたどり着いた。動く円盤で…
ここまで来るのに何階上がってきただろう。相当な高さだ。
「それじゃあ、入るよ。失礼のないようにね。」
「マジで気をつけろよ…」
ハ、ハクラルがそこまで言うなんて…
そう考えてるうちにサクセスはさっさとノックして扉を開けていた。
「サンリュウ学園長、サクセス・ナフ、ハクラル・リソード、そしてラルティア・セフネスです。」
「入れ。」
お、声的に男だ。
「失礼します。」
二人が同時に言って部屋に入った。
二人のあとに続いて私も部屋に足を踏み入れた。
「ラルティア・セフネス。ようこそ、レフールへ。」
そう言った学園長は…女だった…。
歳は結構いっていると思う。声の低い厳しそうなおばさんだ。でもすっごく貫禄があるというか。
「ハクラル!!」
いきなり学園長がハクラルを睨みつけた。
「はいっ!!」
ハクラル、大きな声で返事をしたものの…脅えている…彼らしくもなく。
「お前の行動はずっと見ていた…なんだ!!あの態度は!! …ラルティア、すまないね。ハクラルがとても失礼な態度をとっていて。」
「あ、い、いいえ…」
「それからサクセス!!」
「はい…」
「お前ももっとここの生徒らしく振舞え!!」
「はい…」
こ、こわぁー。どーしよー!!このままじゃ私も危ない…
「ラルティア。」
「は、はい!!!」
「いきなり呼んでごめんなさいね。それにあなたの前でみっともないところを見せたわ。私がここの学園長、サンリュウよ。」
ほえ!? なんなの?? 怒るんじゃないの??
「不安もあるでしょうが明日から頑張ってちょうだい。あなたにはここに通ってもらわないといけないの。これからについてはこの二人がしっかり教えてくれるから。」
「ハ、はぁ…。」
「それじゃ、がんばってね。ハクラル、サクセス!!こんどこそしっかり案内するのよ。」
「はい…」
二人揃って元気のない返事…
にしても何だろう。このサンリュウとかいう学園長、私の前ではすっごく優しく微笑むのに、二人の前じゃ目つきが変わった。
「失礼しました。」
二人は落ち込んだまま部屋を出て行った。
私もあわてて二人を追いかけ、部屋を出て行った。
学園長の秘密は再び乗った動く円盤の中で聞いた。
「サンリュウ学園長は女子にはすっごく優しいんだよ。とくに気に入った女の子にはもうメロメロってくらい優しいよ。君も結構気に入られてたと思うよ。」
「だが、男子には鬼ってくらいに厳しい。」
「あはは、そうなんだ。しかもハクラルは学園長の孫だから相当厳しくされてるよ。」
え、この生意気男があの学園長の孫!?
「オマエ、いまありえないって顔してるぞ。」
「あ、ばれた?」
ハクラルは小さく舌打ちしてそっぽを向いた。
少し気まづくなったのでサクセスが話題を作ってくれた。
「そ、そういえばさ。もう『君』って呼ぶのもおかしいよね。なんて呼んだらいいかな?」
「ラルティアって呼び捨てでいいよ。」
「うーん、それじゃつまんないなぁ~。」
つまんないってなんだよ…
サクセスはしばらく考え込むようにして私を見つめた。
「そうだ!! ラルちゃんってどうだろ? 可愛くない? ね、ハク!」
「ッハ、そいつにはおバカちゃんくらいがお似合いなんじゃないか?」
むっか~~~~
「もー。ま、でも決まりね! ラルちゃん!! 俺のことはなんて呼んでもいいよ。」
「じゃ、じゃあサクセスで…」
「OK!! あ、こいつのことはハクって呼んでいいから。ね?ハ~ク??」
「うっせー。べつになんでもいい。」
ハクは顔を真っ赤にして言った。少しだけ可愛かったかも…って何考えてるんだろ、私…!!
「じゃ、よろしくね、ラルちゃん。明日からは同じ学校に通う友達だしね。わかんないことがあったら俺達に訊いて?」
「うん、アリガト、サクセぶぅぅ…」
円盤が地面に着いた途端に10人くらいの女子生徒が駆け寄ってきて押されそうになっていた。
「キャー、サクセス君~!!」
「ハクラル君~!!」
お目当ては二人のイケメンのようだった。
「ちょっと邪魔よぅ!!」
そう言った一人の女子生徒に強くおされ、こけそうになった。
だけど、誰かが私の腕を握って助けてくれた。
腕をたどって顔を見ると、ハクだった。
「どけ。俺は今コイツの面倒を見てる。」
え…。
「そういうことなんだ。ゴメンネ。お姫様を護衛してあげないとね。」
そう言って二人は私の両手を握って、エスコートするように人ごみの中から引き出してくれた。
「まったく、オマエは…ん?」
「な、何よ…」
「どーした、顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」
「な、ない!!」
「クスッ、ラルちゃんかーわい~。」
「さ、サクセス!!」
何だろう…生意気だと思ってたけど、二人ともすごく優しい…
ちょ、ちょっとだけ、カッコよかったかな…?
「あ~~~もう!!何考えてるんだ私!!」
「オマエ、マジで熱あるんじゃないか? 頭おかしいぞ?」
「うるさい!!」
明日からの学園生活は波乱の予感…でも…
少しだけ、楽しみかな…?
「ねー、なんなのあの女?」
「サクセス君とハクラル君を一人占めなんて許せないんだけど。」
「ちょっと痛い目見せてやろうよ。」
・・・やっぱり波乱の予感です・・・




