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第6回

 白石ひなとの衝撃の出会いから1か月が経とうとしていた。僕は既にアップされていたAYB32 20期生の冠番組のアーカイブをすべて見た。2回目からは天の声を語る番組ディレクターではなくMCはお笑いコンビの「センターライン」になっていた。そして、第1回の番組内で決まった番組タイトルは『20期生、ただいま検証中。』となっていた。理系の白石ひなのアイデアである「検証」という言葉が入ったことはとても感慨深く感じた。


 そこから週1回の2時間の番組配信は1か月が経過していたこともあり、最新回である5回目の生配信をアーカイブで見ようとしていた。僕が生配信ではなく、あえてアーカイブで見るのには理由がある。それはアーカイブなら自由な時に自由な時間だけ見ることが出来るからだ。僕のこの世界には何の影響が出ないこだわりだ。第5回の企画は「料理対決」だった。アイドル番組の王道でもある企画だが、まだ社会に名の知られていないアイドル達の料理企画には何か事件が起きる…。


 20期生の天野舞と白石ひなの対決になった。天野舞とは高校3年生でお披露目の楽曲でセンターを務めただけでなく、集合グラビアでもセンター、次の新曲では選抜入り確定とまでファンの中で噂されている。

 「それでは今回作って頂く料理はオムライスとみそ汁です!」

 「洋食と和食でバランス悪いでしょ。」

 「まあ、細かいことはいいじゃない…。」

センターラインの二人の掛け合いでスタジオが笑いに包まれた。

 「それではスタート!」

調理時間は合わせて40分だった。白石ひなはそつなくチキンライスを作り、卵を割って焼く。それに比べて、天野舞はいきなり机の上で卵が割れ、黄身が崩れた。

 「え!?何が起こったの!?」

「それ審査員の俺たちが食べるんだぞ!」

センターラインの二人の一言でスタジオが沸いた。

 どうにか味付けを凝らし、玉子を乗せて、白石ひなは完成させた。その反面、天野舞のオムライスは味付けも無茶苦茶で上に乗った玉子も横へずれていた。


 次のみそ汁では白石ひなは理系らしく味噌の分量をミリ単位で測りだした。一方、天野舞はわかめを一袋開け、ボールに全て水に戻した。

 「白石!そんなことしていたら配信終わっちゃうぞ!」

 「天野はわかめをどれだけ使っているんだ!海に生息するわかめになっているじゃねーか!」

 再びスタジオが沸いた。

 形になっている白石ひなの味噌汁に比べて、天野舞は全てのわかめを入れなかったものの何故か汁の色が青っぽくなっていた。

 勝者は明白で、全会一致で白石ひなに軍配が上がった。


 僕は安堵すると共に天野舞のことが気になった。やはり、スターというのは企画の対決で勝つのではなく見せ場を作る。いや、自然と作ってしまうのだ。逆に僕や白石ひなのような真面目なタイプはそつなくこなせても見せ場を作ることは出来ない。わざと失敗するようにしてもそれはファンには見抜かれてしまう。そんなことをふと考えてしまった。

(今日もひなちゃん、可愛いな…。たまんないな…。)

 と、単純に見ることが出来ればいいが、そこは僕の性格の悪さというか、考えてしまう良くも悪くもそういった性分なのだ。


 その晩、僕は母に言って、自分で玉子焼きとインスタントのみそ汁を作り、母が出してくれた料理に2品加えた。僕は形が崩れ、焦げた玉子焼きを食べながら、

 「ひなちゃんも最初はこうだったのかな…。」

 と、思いを馳せた。そう、僕は料理が出来ないのだ。


 お読みいただきありがとうございます!

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