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第50回(最終回)

 2025年12月31日。大晦日。と言っても親戚での集まりもなく実家暮らしの僕にとっては日常の日々と変わらない。

 いつものように年末だからといって遅起きにならないように起床し、朝はラジオ体操を軽くこなし、午後になれば表計算ソフトの勉強や演習を行い、いつも通り足踏みウォーキングをする。

 前までだったらこのような暮らしに焦燥感を抱いて、就職活動をやみくもに行っていたのだろうなと思う。

 しかし、就職活動で惨敗し、簿記2級を取得した上で体調を崩した僕の今は幸せだ。

 人は財や物の充実で幸せを感じる。それは僕も同じだ。欲がないわけではない。しかし、今はそのようなお金さえあれば手に入る幸せを超えた言語化できない幸せを噛み締めている。

 (2026年はどうなるんだろう……。)

 ふと考えた。今、勉強している表計算ソフトの資格を取得しに、隣町まで行って受験するのだろうか、そして、簿記2級とその資格で就職活動に打ち勝てるのだろうか。不安がないわけではない。でも、一歩ずつ前進している感覚は確かにあった。


 外に目を向けると暗闇に雪がちらついていた。後、3時間もすれば今年も終わる。

 リビングにいる家族は有宮博司が司会をしている大晦日恒例の歌番組を見て、今年、流行った曲を歌っている声が聞こえてきた。

 僕は静寂を求め、ベランダに飛び出した。

 大きく息を吸って叫びたい衝動になるが、何を叫ぶか、そして近所の周りを見渡し迷惑にならないか様子を伺った。

 そして、意を決して叫んだ。

 「売れないっーーーーー!」

 今年も大晦日恒例の歌番組に出ることが叶わなかったAYB32の白石ひなも同じように叫んでいる気がした。


(了)

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