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第36回

 僕がAYB32の地方出張公演が始まるのを知ったのは、体調を崩す直前だった。

 (もしかしたら地元の近くじゃなくても車で行ける範囲で地方出張公演行われるかもしれない。その時に簿記2級を武器に就職を決めてお金にも余裕があったら、ひなちゃんに初めて会えるかもしれない。)

 と、心を躍らせていた。

 しかし、そんな自分の心情とは裏腹に現実はこの通り厳しいものだった。


 僕は10年近くAYB32のファンを続けていたが、劇場公演はおろかライブにもほとんど行ったことがない。ほとんどというのは近隣県で行われた無料ミニライブには行ったことがあるからだ。しかし、その時々に移り変わっていった、推していたメンバーとは残念ながら会ったことはなかった。そんな僕にとって地方出張公演は簿記2級の勉強を頑張ったご褒美に思えていた……。それなのに……。


 しばらくして体調が絶不調の時、AYB32の地方出張公演の出演メンバーが発表された。

 遠くの都道府県は行けないので興味がなかったが、近隣県で行けそうな場所があった。

 その出演メンバーを恐る恐る確認すると“白石ひな”の名前があった。

 近くまで来てくれること。そして、活躍の場が一つでも多くあることの嬉しさの反面、その場に僕は行けないのだという悲しみが一気に襲ってきて情緒が乱れた。


 AYB32の地方出張公演が始まった頃、僕は季節の変わり目ということもあり、軽くなりつつあった自律神経失調症の症状が再び悪化していた。

 ベッドでSNSを見てみると、神奈川県公演での白石ひなのパフォーマンスする輝いた姿の写真を見つけ、保存した。


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