↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/51

第35回

 2024年9月。私の楽しみにしていた地方出張公演が始まった。

 私は過労で倒れたこともあって当初の10公演から8公演へ減らすことをマネージャーさんと相談して決めたが、出身地の神奈川県公演に出ることは叶った。

 地元への恩返しというほど大それたことではないが、学生時代からの友達や両親に地元で私の成長した姿を見てほしいと思って気合が入っていた。

始めの公演場所は、奇遇にも私の地元である神奈川県からだった。


 2024年9月2日。「AYB32 地方出張公演 神奈川県公演」がスタートした。

 私はセンターに立つことはなかったが、友達や両親の前で堂々とパフォーマンスをした。

 MCの時間には私の大好きな先輩である高坂春奈とステージで話した。

 「今日はひなちゃんの両親や親戚、友達も来ているんだよね!」

 「そうなんです。なんか恥ずかしいですね。どこにいるかなー?」

 私のレスポンスに会場が沸いた。

 その後も楽曲披露や他のメンバーのMCが続き、神奈川県公演は幕を閉じた。


 9月16日。私は翌日17日に行われる福井県公演のためにAYB32の出演メンバーと共にホテルで宿泊していた。ホテルの部屋は2人1部屋割り当てられていて、天野舞と同部屋になった。天野舞はすでに選抜常連で新曲のセンターも務めている。たわいのない話をするのかなと私は思っていたが、天野舞からは思わぬ言葉が飛び出してきた。

 「AYB32ってこれからどうなると思う?」

 私は返答に戸惑った。選抜経験もなければ相手はセンター経験者、何を言えばいいのか逡巡した。

 「うーん、コロナ禍の時は人気落ちていたけど最近、グループの調子良いし人気出てくるんじゃない?」

 「私はそうは思えないんだよね。」

 天野舞の返答は重苦しいものだった。

 「CDの売上自体も業界全体的に減ってきているし、メンバーの個性も昔に比べてなくてメディアでの露出は他のアイドルに負けているし…。」

 「そうだよね…。」

 私はそうしか返せなかった。

 天野舞はセンターを務めたことで私には経験出来ていないCD売上の重圧やメディアでの振る舞いの難しさを感じていたのだろう。

 「私はセンターに実際立ってみても、グループを引っ張っていけている実感がなかったんだよね。なんだか、大人の人たちに選ばれてただその場所で歌って踊っているって感じで。」

 選抜に入りたくてたまらない私にとっては天野舞のこの言葉は贅沢な悩みと感じた反面、目の前で涙目で震える同期を見て、彼女がとても大きな責任を背負っていることを知った。

 「私は学業との両立で倒れて、卒業だって考えたことがあったんだけど、その時、しがみついていくことが大切だと思ったの。舞がセンターに立ってパフォーマンスをしている姿は悔しくもあるけど、すごく輝いて見えて誇らしいよ。」

 「私もっと強くなってグループを引っ張っていけるようになるね!」

 天野舞は力強く答えてくれた。


 翌日の福井公演、ステージ裏で円陣を組むとき、私は天野舞と笑顔を交わした。


 お読みいただきありがとうございます!

 少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、ページ下部の【ブックマーク追加】や【評価(★★★★★)】で応援していただけると大きな励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。