第16回
東京アイドルフェスタ2023から数日後、僕は猛暑の影響かエアコンが古いせいかは分からないが、冷房の効きが悪い部屋で、公式チャンネルにアップされたAYB32 20期生の動画を見ていた。
そこに映る光景は灼熱の太陽の下で踊る天使のようで、野外会場の暑さを考えると、行きたいような行きたくないような複雑な気持ちとそういった雑念を抱きながら見ていた。
ちょうど僕はその時、簿記2級の山場ともいわれる連結決算に差し掛かり、毎日半べそをかきながら机と電卓に向かっていた。
どことなく僕の生ぬるい部屋での連結決算の勉強と灼熱の太陽下での過酷なステージがリンクした気がした。
『必然的エモーション』のイントロが流れ、僕はセットリストの思わぬサプライズに感嘆の声が漏れた。そして、クライマックスの『いつかのラメライン』。当然、センターは天野舞だ。
「そうだよな…。」
そう声に出しつつ、僕の目は瞬間的にしか映らない白石ひなを追っていた。
いつも明るい表情でパフォーマンスしている白石ひながどこか寂しげだった。
僕は少し気がかりを残しながら、動画は終わった。その後、“次の動画再生まで5、4…”という無責任なカウントダウンが始まり、次のアイドルグループの動画が流れた。
(ハァー…もう消してゆっくりするかー)
と思った瞬間流れてきたのは「千歳川36」というAYB32の公式ライバルグループだった。
千歳川36というのはAYB32が大流行しているときに切磋琢磨するために出来た所謂、「川シリーズ」の三組目のグループで歴史は一番浅い。年齢層が低い子が多く、「日本中に幸せを届ける」というコンセプトで今、大人気なグループだ。
存在はアイドルヲタクの僕は当然知っていたが、AYB32のファンということもあり、敬遠していた。動画を止めて少し休もうと思っていた僕にふと気になる子が映った。
その子に釘付けになっているとあっという間に動画の再生時間は過ぎ、“次の動画再生まで5、4…”という次の動画へ誘う文言が現れ、止めた。
後から調べてみるとその子の名は「宮瀬みずき」というらしい。
天性のあざと可愛さ、おっとりした口調のお嬢様に見えて実は情熱的、そしてステージではハッとさせられるほどの大人びた表情や艶っぽい表現を武器にしている。
僕はベッドで一心不乱に宮瀬みずきのSNSやメンバープロフィールを調べていた。
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