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第12回

 僕は天野舞が初選抜された新シングルのお披露目を簿記のテキストを片手に見た。

 ゴールデンタイムに放送されている歌番組でフルサイズの生披露ということで妙な緊張感があった。天野舞は推しているメンバーではないが、大好きな20期生のメンバーの一員だ。

 聞き馴染みのない曲が大音量で流れる中、僕は集中力を切らしながら、「繰越利益剰余金」や「利益準備金」という言葉を目で追っていた。

 「続いてはAYB32の皆様です。新曲を披露して頂けるということで初選抜の天野舞さん、今のお気持ちはどうですか?」

 と、女性アナウンサーが問いかける。

 「はい。とっても緊張しているのですが、明るく楽しくパフォーマンスしたいです。」

 天野舞は緊張した面持ちで語った。

 僕はテキストを置き、テレビ画面に齧りついた。

 「それでは新曲です。フルサイズでお聞きください。どうぞ。」

 次の瞬間、新曲の『いつかのラメライン』という題とともに明るいイントロが流れ出した。

 コロナ後のAYB32はダンスを魅せる曲にシフトしていたが、王道のアイドル曲に僕は久しぶりに心が躍った。

 「白石ひながパフォーマンスをする『いつかのラメライン』、見てみたいな…」

 小さな声で呟いているうちに約5分間の曲は終わっていた。

 僕はテレビを消して再び「繰越利益剰余金」と向き合った。


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