第22話 泊まる場所がない
夕方。
空が少し暗くなってきた。
「今日、戻るのは厳しいな」
ガランさんが言った。
「泊まります?」
口にしてから気づく。
「……どこに?」
「それ俺が聞きたい」
家は一人用。
寝台も一つ。
アルドさんが倒れていた時ですら、かなり狭かった。
男二人。
「無理ですね」
「外でいい」
「せっかく家あるのに」
旧岩場。
最初の拠点。
今は焚き火と作業場所。
簡単な屋根は残っている。
「一応、雨は避けられます」
「十分だ」
◇
夜。
二人は旧岩場。
私は家。
扉を閉める。
外から二人の話し声が聞こえる。
「……これ、良くないな」
人が来る。
泊まる。
そのたび外。
雨が強かったら。
寒かったら。
「もう一軒?」
自分で言って、少し驚く。
家を一軒作る。
以前なら途方もない仕事だった。
木を切る。
運ぶ。
柱。
壁。
屋根。
失敗。
でも今は。
石斧。
金属ナイフ。
鉄の鍬。
そして経験がある。
「作れるかも」
◇
翌朝。
「来客用小屋を作ります」
「今から?」
「今すぐ完成は無理です」
「そりゃそうだ」
「でも、必要」
アルドさんが周りを見る。
「人増えると思ってるのか?」
「……分からない」
でも。
ガランさん。
来た。
看板。
作った。
次。
誰か。
来るかもしれない。
「なくても困らない。でも、あったら便利」
「お前らしいな」
「そう?」
「ああ」
ガランさん。
「作るなら手伝う」
「え?」
「自分が泊まるかもしれん」
「商人」
「合理的と言え」
笑う。
「本当にいいんです?」
「数日はここで取引見る予定だった」
アルドさんも。
「俺も」
「……二人」
一人じゃない建築。
初めて。
「それなら」
家を作った時より。
ずっと早いかもしれない。
◇
まず場所。
家から近い。
でも。
畑の日陰にならない。
水路を邪魔しない。
「ここかな」
《地盤:安定》
《降雨時浸水危険:低》
「ここ」
目印。
石。
置く。
四隅。
「大きさは?」
「寝られれば」
「二人?」
「二人くらい」
ガランさん。
「じゃあ、家より少し長く」
「はい」
計画。
簡単。
紙。
ない。
地面。
枝。
線。
「ここが扉」
「寝台二つ」
「狭いな」
「泊まるだけなので」
「十分」
自分以外のため。
初めて建物を作る。
少し不思議。
でも。
楽しみ。
私は。
次の日から。
二軒目の家づくりを始めることにした。
◇
来客用小屋。
考え始めると。
必要なもの。
増える。
「寝台」
「二つ」
「扉」
「いる」
「窓?」
「いらん」
「火?」
アルドさん。
「中はやめろ」
「ですよね」
自分の家。
火。
外。
煙。
怖い。
同じ。
「じゃあ暖かさ」
「泊まるだけなら毛布持ってくる」
商人。
自分。
装備。
ある。
「全部用意しなくていい」
その言葉。
少し。
楽。
私。
つい。
全部。
自分。
用意。
しないと。
思う。
でも。
来る人。
持ってるもの。
ある。
「最低限」
屋根。
壁。
寝る場所。
雨。
風。
防ぐ。
「それで」
作る。
小さい。
簡素。
自分の家。
同じ。
品質。
必要ない。
目的。
違う。
設備。
目的に合わせる。
それも。
新しい考え。
だった。
◇
建物の予定地へ石を置いたあと。
私は自分の家と比べた。
「こっち、少し小さい」
「泊まるだけなら十分」
アルドさん。
「自分の家と同じにしようとしてないか?」
「ちょっと」
「必要ない」
確かに。
自分の家。
毎日。
住む。
来客小屋。
一晩。
二晩。
目的。
違う。
「設備って、使い方で決める」
「そう」
また。
一つ。
覚える。
何でも。
豪華。
大きい。
良い。
じゃない。
必要。
十分。
その線。
見つける。
それも。
開拓には大事だった。
自分が困ってから作るだけだった以前と違い、今回は『次に誰かが困るかもしれない』から作る。そう考えると、同じ建築でも少し意味が違って見えた。泉の開拓地は、私だけの暮らしから少しずつ離れ始めている。




