第16話 鉄の鍬
帰った翌日。
「これを……こう?」
鉄の鍬頭。
問題は柄。
樹木地帯から持ってきた、なるべく真っ直ぐな枝を削る。
金属ナイフ。
石斧。
前より加工は楽。
「このくらい?」
鍬頭の穴へ通す。
入らない。
「太い」
削る。
もう一度。
まだ。
削る。
ようやく。
「入った!」
でも。
持ち上げると。
ぐら。
「……」
「細いな」
「削りすぎた」
一本目。
失敗。
前なら。
かなり落ち込んだかもしれない。
でも。
「次」
道具がある。
材料もある。
失敗した理由も分かる。
◇
二本目。
慎重。
少し削る。
合わせる。
まだ太い。
少し削る。
繰り返す。
「入った」
叩く。
しっかり。
前よりぐらつかない。
「糸」
町で買った丈夫な糸。
巻く。
補強。
「できた?」
「使ってみろ」
アルドさん。
まだ一日滞在している。
「見ててください」
◇
畑。
空いてる場所。
鍬。
持つ。
「重い」
振る。
ざくっ。
「……」
地面へ入る。
「え」
持ち上げ。
もう一度。
ざくっ。
「うわ」
土。
崩れる。
「すごい!」
「普通の鍬だ」
「普通すごい!」
石。
尖った。
何度。
叩く。
土。
固い。
手。
痛い。
今。
一回。
「これなら」
畑。
広げる。
水路。
直す。
早い。
貯水槽の周り。
掘る。
「全部できる」
「できるけど、壊すなよ」
「あ」
中古。
柄。
自作。
「大事にします」
◇
少し。
畑を拡張。
「速い」
石が出る。
鍬を避ける。
手で拾う。
「楽」
でも。
楽になりすぎると。
止まらない。
「……疲れた」
「道具良くなっても、人間は同じだ」
「それ」
大事。
休む。
水を飲む。
◇
夕方。
鍬を家の壁へ立てかける。
金属ナイフ。
針。
鍬。
少しずつ増えた。
何もない。
石。
草。
から始まった。
今。
金属。
ある。
「……文明進んだ」
「一人だけな」
「いいんです」
生活。
一段。
また楽になった。
その分。
次に何ができるか。
考える。
それが。
楽しかった。
◇
鍬を使って。
一番変わったのは。
時間。
だった。
今まで。
畑の端を一歩分広げる。
それだけで。
かなり時間。
使った。
今日は。
同じくらい。
短い。
「もう終わった」
自分。
驚く。
余った時間。
水路。
補修。
薪。
集める。
「一日にできること増えた」
道具。
ただ楽。
だけじゃない。
時間。
作る。
「これ、大きい」
アルドさん。
「そういうもんだ」
「金属道具もっと欲しい」
「金が要る」
「またそこ」
「現実」
鍬。
見る。
次。
斧。
スコップ。
鍋。
全部。
欲しい。
でも。
一度。
じゃない。
「まずこれ大事に」
柄。
緩んでない。
糸。
確認。
鉄。
泥。
拭く。
「錆びるぞ」
「錆?」
「ああ。濡れたまま放置するな」
「また維持」
「道具だからな」
便利。
代わり。
手入れ。
必要。
でも。
それ込み。
十分。
価値。
ある。
私は。
鍬を。
家の中。
雨。
当たらない場所へ。
大事に置いた。
◇
鍬を使ったあと。
柄の握る場所。
手。
少し赤い。
「ここ、太い?」
削る。
でも。
削りすぎると弱くなる。
迷う。
少しだけ。
表面。
滑らか。
する。
「これで」
翌日。
使う。
前より握りやすい。
「道具も調整」
買って終わりじゃない。
自分の身体。
作業。
合わせる。
石器の時から。
同じ。
鉄になっても。
最後。
使いやすくするのは。
自分。
「ちょっと私の鍬になった」
その感覚が。
嬉しかった。
石の道具しかなかった頃と比べれば、たった一本の鍬でも十分すぎる進歩だった。便利さを一度知ると、もう前には戻れない。だからこそ、壊さないように使い、直せるところは自分で直す。それも今後の暮らしの一部になっていく。




