↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
技能《土地鑑定》で異世界開拓! ~剣も魔法も選ばず、何もない荒野に一から住処を作ります~  作者: 深夜のトースト
外の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/64

第13話 泉の開拓地

「次、行くぞ」


「どこへ?」


「開拓管理所」


「そんなものあるんですか」


「ベルクは開拓町だからな」


 少し大きな建物。


 入口の看板。


 私は立ち止まった。


「……」


「入らないのか?」


「これ」


 看板を指す。


「何て書いてあります?」


「開拓管理所」


「やっぱり」


「読めないのか?」


「……はい」


 初めて気づいた。


 会話はできる。


 この世界の言葉。


 最初から分かる。


 でも。


 文字。


 読めない。


「うわ……」


「何だ?」


「勉強するもの増えた」


「子どもでも読めるぞ」


「傷つく」


「悪い」


     ◇


 中。


 机。


 紙。


 棚。


 人。


 受付。


「用件は?」


 男の人が聞く。


「こいつが、ルグラ荒野で住んでる」


 アルドさん。


「……住んでいる?」


「はい」


「一人で?」


「はい」


「どの辺りだ」


 地図。


 出る。


「……!」


 私は覗く。


 線。


 川。


 道。


 町。


「これ」


 指す。


「どこ?」


「読めないなら分からないだろ」


「それはそう」


 アルドさんが指す。


「ベルクここ。街道ここ。ルグラ荒野がこの辺。こいつの場所は……」


 少し遠く。


「この辺」


「こんなに」


 広い。


 私は初めて、上から自分の場所を見る。


 荒野。


 地図。


 大きい。


「本当にそんな奥に?」


「俺が行った」


「水は?」


「湧水がある」


「……」


 受付の人が私を見る。


「継続して居住?」


「はい」


「家?」


「あります」


「畑?」


「あります」


「水の確保?」


「あります」


「道路?」


「ないです」


「まあそうだろう」


     ◇


 説明が続く。


「ルグラ荒野の大半は未開拓扱いだ」


「はい」


「利用者が継続居住しているなら、開拓地として仮登録できる」


「仮?」


「町や村として認めるわけじゃない。そこに誰かが住み、土地を使っているという記録」


「登録した方がいい?」


「後で利用権を主張したいなら」


 家。


 畑。


 水路。


 貯水槽。


 全部。


 自分で作った。


 誰かに「そこは俺の土地だ」と言われたら困る。


「……お願いします」


「名前」


「え?」


「開拓地の呼称」


「名前いるんですか?」


「記録するのに必要」


 考える。


 家。


 畑。


 荒野。


 水。


「……泉」


「泉?」


「水があったから、ここで暮らせたので」


 受付。


 紙。


 書く。


「泉の開拓地」


「……」


 文字は読めない。


 でも音は分かる。


「それでお願いします」


     ◇


 書類。


 説明。


 私はほぼ読めない。


 アルドさんが横で確認する。


「変なこと書いてない?」


「書いてない」


「私、何にサイン?」


「名前」


「あ」


 名前。


 自分の。


 書く。


 でも。


 現地文字。


 分からない。


「……書けない」


「字からか」


「はい」


 受付の人が少し困る。


「代筆して、本人確認をアルドに取る形にするか」


「それで」


 アルドさん。


 頷く。


「俺が保証する」


 紙。


 印。


 簡易。


「これで仮登録」


「終わり?」


「ああ」


 控えを渡される。


「読めない」


「持っとけ」


「はい」


     ◇


 外。


 看板をもう一度見る。


「文字」


「教えるか?」


「アルドさん?」


「簡単なのなら」


「お願いします」


「帰ってからな」


「はい」


 歩く。


「泉の開拓地」


 口に出す。


 今まで。


 家。


 拠点。


 そう呼んでいた。


 名前がついた。


「変な感じ」


「嫌なら変えられるぞ」


「嫌じゃないです」


 泉。


 あそこ。


 最初に水を見つけた。


 そこから全部始まった。


「泉の開拓地」


 もう一度言う。


 少し嬉しい。


 自分の暮らしている場所が。


 世界の地図へ。


 ほんの小さく。


 繋がった気がした。


◇


 管理所を出たあとも。


 私は何度も控えの紙を見た。


 読めない。


 なのに。


 大事。


「これ、何て書いてあるんです?」


「泉の開拓地。場所。仮登録。お前が利用者」


「全部?」


「だいたい」


「……読みたい」


「覚えろ」


「はい」


 アルドさんが。


 道端の土へ指で線を書く。


「これは『泉』の最初の字」


「今?」


「気になってるだろ」


「気になります」


 真似。


 指。


 書く。


「違う」


「どこ?」


「ここ」


「似てる」


「似てない」


 難しい。


「子どもでも?」


「読める」


「また傷つく」


 でも。


 面白い。


 文字。


 分かれば。


 看板。


 値段。


 書類。


 自分で読める。


「必要だ」


 小説。


 という言葉は出ない。


 でも。


 情報。


 人から聞くだけじゃない。


 文字。


 使える。


 それは。


 土地鑑定とは違う。


 別の力。


「帰ったら練習します」


「紙ないぞ」


「土で」


「それならできる」


 泉の開拓地。


 名前だけじゃない。


 自分の場所。


 世界の中で。


 少しずつ。


 形を持ち始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。