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技能《土地鑑定》で異世界開拓! ~剣も魔法も選ばず、何もない荒野に一から住処を作ります~  作者: 深夜のトースト
外の世界

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第7話 金属の刃

「怖っ」


 草が一度で切れた。


「怖っ!」


「なんで二回言った」


 アルドさんが呆れる。


「石のナイフだと、何回もギコギコしてたんですよ?」


「それ、ナイフって呼んでいいのか?」


「私の中ではナイフです」


 中古。


 小さい。


 アルドさんによれば、切れ味も新品ほどではないらしい。


 それでも。


「文明……」


「何?」


「なんでもないです」


 土芋を切る。


 すっ。


「薄い……」


「指も同じように切れるぞ」


「……急に怖くなった」


「力を入れすぎるな。切れない刃物の方が滑って危ないこともある」


「そうなんですか?」


「少なくとも、無理に押し込むな」


 ゆっくり。


 土芋。


 切る。


 今までより均等。


「料理上手になった気がする」


「道具が良くなっただけだ」


「言わなくても」


     ◇


 ちょうど角兎が罠に一匹かかった。


「今日は、これでやってみます」


「指切るなよ」


「怖いこと言わないで」


 皮。


 切る。


 する。


「え」


 刃が入る。


 今まで。


 毛に引っかかる。


 押す。


 擦る。


 時間。


 それが。


「……全然違う」


「道具は大事だ」


 皮と肉の間。


 少し。


 刃。


「力いらない」


「だから力任せに使うな」


 ゆっくり。


 慎重。


 前より。


 きれい。


 早い。


「……すごい」


 何度目か分からない。


 でも、出る。


 道具一つで、これだけ変わる。


     ◇


 次。


 針。


 糸。


 今の服。


 袖の端。


 少し破れている。


 裾にも穴。


「これ」


 現代で裁縫なんて、ほとんどしたことがない。


 ボタンをつけたことが数回。


 家庭科の授業は遠い記憶。


「糸、通らない」


「……」


「見えない」


「……」


「穴、小さくないですか?」


「針だからな」


「アルドさん、できます?」


「貸せ」


 入った。


「なんで」


「商人だぞ。荷の補修くらいする」


「ずるい」


「何が」


 返してもらう。


 糸の端。


 結ぶ。


「これで?」


「抜けなきゃいい」


 布へ。


 針。


 一回。


「痛っ!」


 指に刺さった。


「……」


「見ないでください」


「さっき気をつけろと」


「針って、本当に刺さるんですね」


「何だと思ってた」


「道具」


「合ってる」


 少し血。


 指を舐める。


「続き」


 ゆっくり。


 針。


 布。


 糸。


 穴。


 閉じる。


「……できた」


 きれいではない。


 縫い目。


 ガタガタ。


 でも。


 穴。


 塞がった。


「直った」


 服。


 買えない。


 作れない。


 今までは。


 破れたら、そのまま。


「これで長く着られる」


 嬉しい。


     ◇


 夕方。


 道具を並べる。


 石のナイフ。


 金属ナイフ。


 針。


 糸。


「捨てるのか?」


「石?」


「ああ」


「捨てません」


「使わないだろ」


「予備」


 それに。


 この石のナイフ。


 最初。


 何もない時。


 作った。


 切れない。


 不便。


 でも。


 これで草を切った。


 肉を切った。


 枝を削った。


 何とかしてきた。


「思い出?」


「それもあります」


 アルドさんが少し笑う。


「変なやつ」


「よく言われます?」


「今日初めて言った」


「じゃあまだ一回です」


 私は金属ナイフを鞘へ入れ、石のナイフは物置の端へ置いた。


 新しいものが来たからといって、古いものが全部いらなくなるわけじゃない。


 失敗しながら作った道具も。


 これまでの生活の一部だ。


 外から持ち込まれた金属の刃と。


 自分で作った石の刃。


 二つが並んでいるのを見て。


 少しだけ。


 ここが本当に、外の世界と繋がり始めたように感じた。


◇


 金属ナイフを使い始めて、一つ困ったことにも気づいた。


「これ、切れなくなったらどうするの?」


 アルドさんへ聞く。


「研ぐ」


「何で?」


「砥石」


「ありません」


「だろうな」


 また欲しいものが増えた。


「普通の石じゃ駄目?」


「石次第。下手にやると刃を傷める」


「……触らない方がいい?」


「今はな」


 私はナイフを鞘へ戻した。


 便利な道具。


 でも。


 壊れたら、自分では直せない。


 石のナイフは、自分でまた作れる。


 金属ナイフは、それができない。


「便利なものって、維持も必要なんだ」


「当たり前だ」


「なんか、文明って面倒」


「お前さっき文明って喜んでただろ」


「喜びと面倒は両立します」


 その日から。


 金属ナイフは、何でも切る道具ではなくなった。


 土を掘らない。


 石へ当てない。


 太い枝へ無理に使わない。


 雑な作業は石のナイフ。


 切れ味が欲しい時は金属。


 使い分ける。


 新しい道具が増えるたび、ただ便利になるだけじゃなく、扱い方も覚えなければいけない。


 それもまた。


 少しずつ暮らしが複雑になっていくということだった。

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