第24話 はじめての水路
水路作りは、思った以上に地味だった。
石を拾う。
運ぶ。
並べる。
粘土を詰める。
また石を拾いに行く。
「籠がなかったら諦めてたかも」
それくらい運搬が多い。
なるべく平たい石を選び、水路の底へ並べる。全部を綺麗に覆うなんて無理だから、水が染み込みやすい場所を優先した。
側面が崩れるところには小石を積む。
その隙間へ粘土。
「職人さんってすごいな……」
自分でやると、何でも曲がる。
水路も当然まっすぐではない。
蛇みたいに少し曲がって畑へ伸びている。
でも。
「流れればいい」
◇
数日後。
ようやく畑の近くまで水路がつながった。
「試すよ」
誰もいないのに宣言する。
水場の端を少し開ける。
水が入る。
ちょろちょろ。
石の上を流れていく。
「来た……」
前回消えた場所。
通過。
「よし!」
次。
少し流れが遅くなる。
「頑張れ」
水に言っても仕方ない。
それでも言う。
さらに先。
また先。
そして。
「あ……!」
畑の横。
小さく掘った受け皿のような穴へ、水が落ちた。
ちょろ。
ちょろちょろ。
「来た!」
私は走った。
「水が来た!」
水場へ行っていない。
器も持っていない。
なのに畑の横へ水が流れてきている。
「すごい……」
手ですくう。
冷たい。
いつもの水だ。
自分が掘った道を通ってきた水。
胸の奥から、笑いが込み上げた。
「これなら水瓶に溜められる」
水瓶を受け皿の近くへ置く。
直接流し込むのは難しいので、小型器ですくって移す。
それでも水場まで往復する必要はない。
「楽……!」
たった数歩。
でも毎日。
何十回も積み重なる数歩。
それが消えた。
◇
もちろん問題もあった。
流しすぎると、水場の水位が下がる。
「これは駄目」
すぐに入口を狭くした。
あくまで余って流れ出す程度。
飲み水が最優先。
水路にも、崩れる場所があった。
粘土が剥がれるところもある。
毎日確認が必要。
「便利になった分、仕事も増えた」
でも嫌ではなかった。
直せばいい。
少しずつ。
今までずっと、自分が水へ行っていた。
今日から。
水が、私の暮らす場所まで来る。
「開拓って感じするなあ」
私は流れる水を眺めた。




