第23話 水は思い通りに流れない
水場と畑の間にしゃがみ込む。
「《土地鑑定》」
《傾斜:微》
少しだけ。
水場から畑方向へ低くなっている。
「いけそう」
湧水そのものを全部流すつもりはない。
飲み水がなくなったら最悪だ。
今は、水場から溢れて地面へ染み込んでいる水がある。
「これだけ使えないかな」
水場の端。
そこから畑方向へ、小さな溝を掘る。
幅は手のひらくらい。
深さもそれほどない。
「まず試すだけ」
尖った石で土を削る。
以前より地面を掘ることには慣れた。
それでも時間はかかる。
水場から一歩。
二歩。
三歩。
途中で何度も土地鑑定を使って、低い方向を確認する。
ようやく畑の少し手前まで溝が続いた。
「できた……?」
水場側の土を少し崩す。
ちょろ。
「来た!」
水が溝へ入る。
ゆっくり。
ゆっくり。
進む。
「そのまま、そのまま……」
私は水の横を歩く。
ところが。
「……あれ?」
途中で勢いが弱くなった。
さらに進む。
水が消えた。
「え?」
溝を見る。
濡れている。
でも、その先へ流れていない。
「染み込んでる?」
土へ全部吸われている。
「そんな……」
水を増やせば進むかもしれない。
少し多めに流す。
今度はさっきより先まで行った。
でも。
やっぱり途中でなくなる。
「駄目だ」
私はその場へ座り込んだ。
簡単だと思った。
溝を掘れば水は流れる。
そんなわけではなかった。
◇
翌日。
水路候補をもう一度見る。
昨日濡れていた場所は乾いている。
「全部地面に吸われたんだ」
どうする。
石。
粘土。
頭に浮かぶのは、今まで使ってきたもの。
「底を塞ぐ?」
試しに一部だけ。
平たい石を並べる。
隙間へ粘土を押し込む。
その区間だけ水を流してみる。
「……流れた」
石を敷いたところは、前より水が残る。
「これだ」
ただ。
水路全部へ石を敷く。
簡単ではない。
石を集める。
形を合わせる。
隙間を粘土で塞ぐ。
「一日じゃ無理だな」
むしろ。
何日かかるだろう。
それでも。
昨日みたいに何も分からなかった時とは違う。
失敗したから、次に試すことが分かった。
「よし」
私は籠を持ち上げる。
「石、集めよう」
水は。
思った通りには流れてくれない。
だったら。
流れる道を作ればいい。




