第21話 芋以外のもの
芋は美味しい。
焼ける。
煮られる。
育てられる。
とても優秀だ。
ただ。
「毎日だと飽きる」
贅沢なのは分かっている。
でも身体も、たぶん色々なものを食べた方がいい。
「他に食べられるもの、ないかな」
北西。
植物が増えている方向。
樹木のある場所まで行ったことはあるけれど、材料ばかり見ていて食べ物はほとんど探していなかった。
籠と石のナイフを持つ。
念のため掘削用の石も入れた。
「行こう」
◇
低木地帯を越える。
木がまばらに生えている場所。
さらに少し先。
この辺りまで来ると、地面の色そのものが拠点付近と違う。
草が多い。
小さな花もある。
地面へ手をつく。
「《土地鑑定》」
《植物生育適性:中》
《周辺植生:高》
《周辺生態反応:複数》
「食べ物……」
そこまで都合よく教えてくれない。
植物そのものは鑑定できない。
「分かってます」
立ち上がって探す。
しばらく歩いたところで、腰くらいの高さの植物を見つけた。
細い枝の先から、細長いものがぶら下がっている。
「……豆?」
見た目はさやに近い。
でも、この世界の植物。
見た目だけで食べる気にはならない。
周囲を見る。
地面に落ちたさや。
その一部がかじられている。
「何か食べてる」
さらに探す。
小さな足跡。
角ウサギより少し小さい。
枝にも何かがつついたような跡がある。
「動物は食べてる……」
だから人間も安全。
とは限らない。
それは芋の時にも思った。
私はいくつかだけ採った。
「持って帰って、少しだけ試そう」
◇
さやを割る。
中には丸い粒が数個。
「やっぱり豆っぽい」
生では食べない。
鍋へ水を入れ、しっかり煮る。
十分柔らかくなったところで、一粒だけ取り出した。
「……怖いな」
匂い。
変な刺激臭はない。
ほんの少しだけ噛む。
「苦くない」
飲み込む。
それ以上は食べない。
しばらく待つ。
水を飲みながら。
畑仕事をしながら。
さらに待つ。
夕方。
「大丈夫……そう?」
身体に変化はない。
翌朝も問題なし。
そこで初めて、少量を食べてみることにした。
芋と一緒に鍋へ入れる。
「芋と豆のスープ」
塩はない。
相変わらず味は薄い。
でも。
「食感が違う!」
それだけで嬉しい。
豆らしいものは少しほくっとしていた。
「畑で育たないかな」
自然に出た言葉だった。
食べ物を見つけると、今はもう。
食べるだけでなく。
育てられないか考えてしまう。
「……私、農家になってきてない?」
笑いながら、残しておいた何粒かを見る。
試してみよう。




