第20話 はじめての煮込み
水瓶を作った時のことを思い出す。
大きく作ろうとして、一度崩れた。
だから今回は欲張らない。
「小さめでいい」
一人分。
小型の器より大きく、水瓶よりずっと小さい。
粘土をこね、底を作り、少しずつ壁を立ち上げていく。
前より手際はよくなっていた。
「成長してる」
とはいえ、丸くはない。
片側だけ少し膨らんでいる。
「……味だよ、味」
誰に見せるわけでもない。
形より問題なのは、火にかけても大丈夫かどうかだった。
今ある小型器は、水を入れるだけ。
直接火へかけたことはない。
作った鍋を十分に乾燥させ、これまでと同じように少しずつ温めて焼く。
焼成自体は成功した。
「ここからだよね」
鍋へ少量の水を入れる。
焚き火の真ん中へ置こうとして、手が止まった。
「……割れそう」
最初の器が割れた時の音を思い出した。
いきなり強火。
なんとなく駄目な気がする。
焚き火の端。
熱は来るけれど、炎が直接当たり続けない場所へ置いた。
待つ。
「まだかな」
待つ。
水面に変化はない。
「遠すぎ?」
少し近づける。
さらに待つ。
やがて。
「お?」
底から小さな泡が上がった。
「きた!」
泡が増える。
そして。
ふつふつ。
「沸いた!」
私は思わず両手を上げた。
お湯。
この世界へ来てから、初めて作ったお湯だ。
それだけなのに感動した。
「じゃあ……入れてみよう」
芋を小さく切る。
今までは平たい石の上で焼いていたけれど、今日は水の中へ。
「煮えるのかな」
しばらく待つ。
石のナイフで刺してみる。
「まだ硬い」
さらに待つ。
水が減ったら少し足す。
火が弱くなったら薪を追加。
思ったより時間がかかった。
ようやく芋が柔らかくなる。
「……できた」
器ですくう。
汁は透明に近い。
味付けなんてない。
ただ、芋を水で煮ただけ。
「いただきます」
まず汁。
「あつっ」
慌てて口を離す。
少し冷まして、もう一度。
「……あ」
味は薄い。
ものすごく薄い。
でも温かい。
芋から出たわずかな甘みが水へ移っている。
「美味しい……」
焼いただけとは違う。
柔らかい芋。
温かい汁。
それだけで、立派な料理に感じた。
「塩欲しい」
次の欲望がすぐ出た。
「お肉も入れたい」
さらに増えた。
私は笑う。
鍋一つで、食事の可能性が一気に広がった。
その日の夕食。
私は家の入口に座り、小さな鍋から芋の煮込みを食べた。
「家で温かいもの食べてる……」
元の世界なら、当たり前すぎて考えもしなかった。
今は。
すごく贅沢だった。




