第19話 家のある朝
目を覚まして、最初に見えたものが土ではなかった。
「……屋根」
葦と草を重ねた、私が作った屋根だ。
しばらくぼんやりと見つめてから、身体を起こす。昨日まで使っていた草だけの寝床とは違い、枝を組んで作った寝台は身体が地面から少し浮いている。
腰は痛い。
肩も痛い。
でも、前よりずっとマシだった。
「家ってすごい」
扉を開ける。
朝の光が差し込んだ。
外には焚き火。少し離れたところには畑。その隣には水瓶がある。
さらに振り返れば、家。
「……ほんとに家ある」
昨日も何度も見たのに、まだ嬉しい。
まず畑へ行く。
六つ植えた芋は、その後すべて芽を出していた。最初に出たものは、もう指先どころではない。小さな葉を何枚か広げている。
「順調……なのかな」
土地へ手をつく。
「《土地鑑定》」
《表土水分:少》
《植物生育適性:中》
《地下植物反応:六》
《生育反応:良》
「良!」
思わず声が弾んだ。
農業のことなんて相変わらず分からない。でも少なくとも今すぐ枯れそうではないらしい。
水瓶から水をすくい、少しずつ与える。
柵にも異常なし。
次は火。
灰を掘ると、奥に赤い部分が残っていた。
「よし」
枯れ草と細い枝を足して火を戻す。
以前は起きた瞬間から、水、食料、火、寝場所。全部が不安だった。
今は。
水がある。
畑がある。
火がある。
そして帰る家がある。
「……生きるだけじゃなくなってきたなあ」
焼いた芋をかじりながら、私は家を見る。
ちゃんと暮らしたい。
そう思った。
まず欲しいものは――。
「毎日、焼き芋か焼いたお肉なの、そろそろ飽きた」
自分でも贅沢になったと思う。
少し前まで食べられるだけで感動していたのに。
でも、便利になれば次が欲しくなる。
「煮物……スープ……」
頭に浮かぶのは、温かい汁。
そこで一つの道具が浮かんだ。
「鍋」
まだない。
ずっと欲しいと思っていたものだ。
私は水場の近くにある粘土を見る。
「次は、鍋だな」
家ができた最初の朝。
私は、生きるためではなく。
少しだけ美味しく暮らすためのものを作ることにした。




