雑魚だんっ。
何も考えずに書いてる
スライムの最大の利点は、足音が全くしないことだ。
おまけに暗視能力(というか魔力感知による空間把握)も備わっているため、暗い迷宮の中をスルスルと進むことができる。
(いやー、スライム最高だな。ゴブリンの背後から酸を飛ばすだけで終わる)
『私の魔力を泥棒しておいてよく言うわね。ほら、右から大蝙蝠が来るわよ!』
道中、低層の魔物たちが群れで襲ってきたが、今の俺とアイリスの敵ではなかった。
触手から【フロスト・ウィップ】を放ち、凍らせては壁に叩きつける。まさに無双状態だ。下手に人間の姿で剣を振るうより、縦横無尽に伸縮するスライムボディの方がよっぽど合理的で強い。
数時間ほど迷宮を下り続け、俺たちは目的の第10階層へと足を踏み入れた。
そこは、ギルドのマスターの言葉通り、息を呑むほど美しい場所だった。
壁も天井も、青や紫に発光する巨大なクリスタルで覆われている。光が乱反射し、まるで万華鏡の中にいるような幻想的な空間を作り出していた。
『……感じるわ。この奥よ、ナルセ』
(ああ、油断するなよ。噂の「親玉」がいるはずだ)
ボス出現:水晶蜘蛛
おでましか。
広大なドーム状の空間に出た瞬間、頭上からパラパラと細かな結晶が落ちてきた。
見上げると、天井のクリスタルに同化するように張り付いている巨大な影があった。
「シャアァァァァッ!!」
大型トラックほどの巨体を持つ、透き通った装甲を纏った蜘蛛――クリスタル・アラクネだ。
その無数の複眼が獲物(俺)を捉え、鋭い牙から紫色の毒液が滴り落ちる。
『来るわよ! あの毒、強力な溶解作用があるみたい!』
(スライムを溶かす毒かよ! 同業者みたいなもんだな!)
蜘蛛が巨大な腹部を向け、銀色の糸を網状にして吐き出してきた。
普通の冒険者なら一溜まりもなく捕らえられるだろうが、俺はスライムだ。
体を極限まで平たくし、網の隙間を「つるん」とすり抜ける。
(よし、反撃だ!)
俺は【徹甲酸弾】を蜘蛛の腹部に向けて三連射した。
だが、弾丸が蜘蛛の甲殻に当たった瞬間、キィィン!という高い音を立てて弾かれてしまった。
(硬っ!? 水晶の装甲か!)
『物理的な硬さに特化しているみたいね。なら、内部から直接壊すしかないわ!』
アラクネは素早い動きで壁を這い回り、四方八方から毒液の雨を降らせてくる。
回避に専念していたが、俺は避けきれなかった数滴を被ってしまった。
ジュワァァァッ!
(痛っ! いや、痛覚ないけど!体の表面のゼリーが削られてる!)
『ナルセ! 私の刀身を外に出しなさい! 斬り裂くわよ!』
俺は意を決し、体内に隠していたアイリス(折れた魔剣)の柄の部分を触手でしっかりと握り、刃先を外へ突き出した。
「スライムが剣を構える」という、シュール極まりない構図の完成だ。
(いくぞ、アイリス! 魔力全開だ!)
『【絶対零度・エッジ】!!』
俺はスライム特有のバネを活かして壁を蹴り、アラクネの頭上へと猛スピードで跳躍した。
アイリスの刃から、周囲の空間ごと凍りつかせるような猛烈な冷気が噴き出す。
アラクネが迎撃のために鎌のような前足を振り上げてきたが、俺は空中で体を「ぐにゃり」と捻り、その攻撃を紙一重で躱す。
そして、すれ違いざまに、冷気を纏ったアイリスの刃をアラクネの関節――水晶の装甲に覆われていない唯一の隙間へと深々と突き立てた。
「ピギャァァァァッ!?」
傷口から絶対零度の冷気が侵入し、アラクネの体内を瞬時に凍結させていく。
内部から膨張した氷が水晶の甲殻を突き破り、巨大な蜘蛛は甲高い破砕音と共に粉々に砕け散った。
共鳴する二つの欠片
「……ふぅ、勝ったぜ」
『ふふん、私の切れ味のおかげね! さあ、ナルセ、あそこよ!』
アラクネが守っていた最奥の台座。
そこには、アイリスの刀身と同じ、透き通るような青い輝きを放つ「剣の切っ先」の破片が浮遊していた。
近づくだけで、俺の中のアイリスが激しく脈打つのがわかる。
俺はゆっくりと這い寄り、その破片をゼリー状の体で大切に包み込んだ。
《 聖遺物『蒼氷の魔剣(破損)』のパーツを検知。結合を開始します 》
《 結合成功。固有スキル【氷結】が【氷雪世界】へ進化しました 》
《 スライムの魔力上限が大幅に解放されました 》
(おお……なんか、体がめちゃくちゃ軽くなったぞ。冷気も桁違いだ)
『ああっ……力が、記憶が少し戻ってきたわ……!』
俺の体の中で、アイリスの折れていた刃が破片と繋がり、元の美しい姿へと一歩近づいた。
しかし、喜びに浸るのも束の間、アイリスの焦ったような声が脳内に響いた。
『ナルセ……思い出したわ。ギデオンの本当の狙いが』
(なんだって?)
『あいつ、私をコア(動力源)にして、この迷宮都市エーテルそのものを『巨大な生体兵器』に作り変えるつもりよ!』
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