野生のよっぱらいがあらわれた!
文章書くパワー学習中
冒険者ギルドでの登録は、思いのほかあっさりと終わった。
渡されたのは、銅製の粗末なギルドカード。これで俺も立派な冒険者だ。
「ふぅ、なんとかなったな」
(油断しないで。あの奥にいた男、なんだか嫌な気配がしたわ)
アイリスの警告を胸に、俺たちはさっそく「Eランク:薬草採取」の依頼を受注し、街の外の森へと向かった。
手持ちの資金がゼロなので、まずは日銭を稼がないことには始まらない。
それにしても……。
ローブの中は地獄だぜ
人間らしく歩くというのは、スライムにとって至難の業だった。
「右、左、右……くそっ、足(に該当する部分)がもつれる!」
『ちょっと、姿勢が悪いわよ! もっと背筋を伸ばしなさい! 伝説の魔剣の持ち主が猫背なんて許されないわ』
(俺には背骨がないんだよ!)
そんな漫才を脳内で繰り広げながら、森の中で発光する薬草を摘む。
スライムの体は便利で、ローブの袖口から「触手」をすっと伸ばして草を引き抜けるので、採取効率は抜群だった。
気持ちよく順調にノルマをこなしていたその時。
「――器用な真似をする。まさか、あの『蒼氷の魔剣』が下等なスライムに寄生されているとはな」
背後から響いた冷たい声に、俺はビクッと全身(ゼリー状)を震わせた。
振り返ると、黒いコートを着た隻眼の男が立っていた。ギルドの奥でこちらを睨んでいた男だ。
その声を聞いた瞬間、体内のアイリスが激しく動揺するのを感じた。
『ギデオン……! なぜ、あいつがここに!?』
(知り合いか?)
『……私を勝手に改造しようとして、失敗して捨てた錬金鍛冶師よ!』
「探したぞ、私の最高にして最悪の失敗作。さあ、大人しくその剣を返してもらおうか。スライム風情には荷が重い」
ギデオンが指を鳴らすと、地面の土がうごめき、巨大なゴーレムが3体、ズズズと這い出してきた。
「おいおい、初クエストでいきなりボス戦かよ!」
ゴーレムの丸太のような腕が、俺の頭上から容赦なく振り下ろされる。
普通の人間なら、ひしゃげて即死のタイミングだ。
だが、俺は「人間」じゃない。
俺はローブの中の体積を一気に下半身へと集中させ、ペラペラになったローブの上半身をゴーレムの拳が空振りした。
「なっ!?」
驚愕するギデオンをよそに、俺はすかさず反撃に出た。
(アイリス、力貸せ!)
『言われなくても! 凍り付け、ポンコツ土人形!』
右腕の袖口から、アイリスの刃先を少しだけ突き出す。
そこから【氷結】の魔力を乗せた【酸弾】を連射した。
ピシィィィッ!
ゴーレムたちは強酸で表面をドロドロに溶かされながら、同時に内部から急速冷凍され、ピタッと動きを止めて崩れ落ちた。
「ほう……」
じっと眺めていたギデオンは悔しがるどころか、むしろ歓喜に満ちた笑みを浮かべた。その隻眼が、獲物を見つけた蛇のようにギラギラと輝いている。
「ただの寄生ではない。スライムの柔軟な体組成と、魔剣の魔力回路を完全にリンクさせているだと……? 素晴らしい! それこそが私の求めていた『生きた武具』の完成形だぁ!」
(うわ、こいつヤバい奴だ。目が完全にマッドサイエンティストのそれじゃん!)
『ナルセ、逃げるわよ! 今の私たちじゃ、あいつの本格的な魔術には勝てない!』
俺は凍ったゴーレムの残骸を蹴り台にして、思い切り後方へ跳躍した。
空中で【粘着糸】を木の枝に飛ばし、ターザンのように森の奥へと逃げ込む。
「逃がすものか、私の愛しい被検体っ!ヒックっ!!」
狂気を孕んだ錬金術師の笑い声が、森に響き渡る。
人里離れた温泉地でのんびりするはずの俺の異世界ライフは、どうやらトラブルに愛されすぎているらしい。
(てかあいつ……。酒酔ってね?)〈黙りなさいっ!!〉
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