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フリザード(単話版)

とりあえず今日はぁ~・( ´∀` )

宇宙規模の働き方改革により、三万人の団体客を捌くという地獄のロードを乗り越えた数日後。

スライム温泉郷に、突如として異常気象が訪れた。


裏山の木々が真っ白に霜柱を立て、露天風呂「銀河の湯」の表面に、パキパキと音を立てて分厚い氷が張り始めたのだ。


「ぶるっ……! な、なんだこの寒さは! 我の暗黒の炎すら凍りつきそうだぞ!」

厨房から魔王が、毛布にくるまって飛び出してくる。

「オーナー! 薪が凍って割れません! 聖剣がただのアイスキャンディーみたいになってます!」

アーサーも歯をガチガチと鳴らしている。


(ただの冬将軍じゃない。……宇宙レベルの冷気だ)


ギャラクシースライムは、自身の星雲ボディを小刻みに震わせて摩擦熱を起こしながら、上空を見上げた。

アストラル・スライム・ゲートから、巨大な「氷のクリスタル」の形をした宇宙船が、凄まじい冷気を撒き散らしながら降下してくる。


エントランスに降り立ったのは、全身を透き通るような氷の装甲で覆われた、見上げるほど巨大な雪男スペース・イエティだった。その後ろには、カプセル型のコールドスリープ装置を抱えた氷の妖精たちがズラリと並んでいる。


「……無駄なエネルギーの消費、無駄な感情の起伏、無駄な代謝。この温泉宿は、宇宙の熱的死を早めるだけの悪しき施設だ」


スペース・イエティが、口から絶対零度の吹雪を吐き出しながら冷ややかに宣言した。


「私は『全宇宙・絶対零度睡眠公社』のCEO、フリザード。……労働の女神が『休息』を推奨したことは評価するが、温泉などという非効率な手段は認めない。究極の休息とは、細胞活動を完全に停止させる『コールドスリープ』に他ならない!」


どうやら、温泉ブームに業を煮やした「別の休息派閥」のトップが乗り込んできたらしい。


「お湯に浸かってダラダラと時間を過ごすなど愚の骨頂。我が社のコールドスリープ装置に入れば、一瞬で数万年の完全な休息を得られる。さあ、この野蛮な熱湯を凍らせ、全宇宙を美しく静寂な氷の眠りにつかせるのだ!」


フリザードが両腕を掲げると、空から巨大な氷柱が次々と降り注ぎ、旅館の庭や屋根を瞬く間に白銀の世界へと変えていく。


『……ちょっと。うちの自慢の温泉を凍らせるなんて、いい度胸じゃない』


凍りつくロビーの奥から、カツン、カツンと下駄の音を鳴らして現れたのは、若女将のアイリス(アバター姿)だった。

彼女の周囲だけ、氷が瞬時に溶け、水蒸気となって立ち上っている。彼女のオッドアイの片方――「炎」を司る瞳が、かつてないほどに紅蓮の輝きを放っていた。


「なんだお前は? 有機生命体ではないようだが……私の絶対零度を中和しているだと?」


『私は【双極の星剣】。氷と炎、両方の極致を司る魔剣よ。……あんたのその「ただ冷たいだけ」の氷なんて、私に言わせれば三流の冷蔵庫以下ね』


アイリスが扇子をパチンと閉じると、その背後に白金と紅蓮のオーラが渦を巻き、巨大な二刀流の剣の幻影が出現した。


「フハハ! よく言った女将! 我もこのチンケな雪ダルマに、魔界の灼熱を教えてやるわ!」

「俺の聖剣も、摩擦熱でならまだ戦えます!」


従業員たちが一斉に戦闘態勢(接客態勢)に入る。


(いやいや、待て待て。宿の中で本気でドンパチやったら、氷どころか山ごと消し飛ぶぞ!)


俺は慌ててぽよんと跳ね上がり、アイリスとフリザードの間に割って入った。


「まあまあ、フリザードさん。コールドスリープが効率的なのは認めるよ。でもさ、『温かさ』がない休息なんて、ただの『死』と変わらないんじゃないか?」


「軟体生物が何を言う。完璧な保存状態こそが至高。温もりなどという曖昧なものは、細胞を劣化させるだけだ」


「……なら、試してみるか? あんたの絶対零度と、うちの温泉、どっちが本当に客を『癒やせる』のか」


俺はギャラクシーボディを限界まで膨張させ、凍りついた「銀河の湯」の上に覆い被さった。

そして、体内に取り込んでいた宇宙源泉の星屑魔力と、アイリスの炎の魔力をリンクさせる。


「アイリス、手伝ってくれ! 全力でお湯を沸かすぞ!」

『仕方ないわね……特別料金、後で請求するわよ!』


アイリスの紅蓮の魔力が俺のスライムボディを通して温泉に注ぎ込まれ、分厚い氷が凄まじい勢いで溶け、沸騰していく。

だが、それだけではない。俺はフリザードの放つ「絶対零度の冷気」すらもスライムの体で吸収し、温泉の温度と絶妙にブレンドさせたのだ。


「さあ、入ってみな。うちの特製【超温冷交代浴・ギャラクシー・スパ】だ。限界まで熱いお湯と、あんたの冷気で極限まで引き締めた水風呂の無限ループ。これが『生きた休息』ってやつさ」


フリザードは怪訝な顔をしながらも、「……私の冷気が負けるはずがない」と、氷の装甲を軋ませながら温泉に足を踏み入れた。


「……ッ!? な、なんだこの熱さは……! だが、私の冷気と反発せずに、細胞の奥底に浸透してくる……!」


熱湯で限界まで温まった後、俺が用意した「絶対零度の水風呂(スライムコーティング付き)」に浸かる。

これを数回繰り返したフリザードの氷の体は、ヒビ割れるどころか、内側からオーロラのように美しく発光し始めた。


「あ、ああ……。血液が……いや、冷却液が全身を駆け巡るこの感覚……。ただ眠るだけでは絶対に得られない、この『生きている』という圧倒的な実感……!」


数十分後。

温泉から上がったフリザードは、すっかり角が取れ、ツルンとした「ただの雪見だいふく」のような丸っこいイエティに変貌していた。


「……完敗だ。コールドスリープは確かに効率的だが、これほどの『快感』と『再生』は得られない。温冷交代浴……素晴らしい文化だ。我が社も今日から、サウナと温泉施設の開発にシフトしよう」


フリザードがホクホク顔で帰っていくのを見送り、俺はどっと疲れが出て床にペシャンコに潰れた。

熱湯と冷気の調整で、俺のギャラクシーボディは完全に伸び切ってしまった。


「オーナー、お疲れ様です。……はい、これ」


ステラ姫が、縁側で冷たい魔力牛乳を差し出してくれる。

俺はそれを一気に飲み干し、プハァッと空気の泡を吐き出した。


(冷やすのもいいけど、やっぱり最後は温かいお湯に限るな)


宇宙の氷すらも溶かす、俺たちスライム温泉郷。


たからとみー。(意味深)

すばらしい。すんばらしい。スバラシア!スンバラシア!!スンバラシエルドア!!!!!

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