クロ
全次元の力が、俺のギャラクシーボディに集束していく。
退化しかけていた青い泥が、金、銀、黒、そして星雲の輝きをすべて取り込み、「透明で、その中に全宇宙の歴史が流れる時計」のような姿へと超・進化を遂げた。
《 究極進化:称号【時を統べる泥】を獲得しました 》
(いける……! 今の俺とアイリスなら、時間すらも切り拓ける!)
『いくわよナルセ! 私たちの宿の「未来」を守るために!』
俺は時喰らいの正面へと空間跳躍した。
時喰らいが巨大な顎を開き、俺の存在そのものを歴史から消し去ろうと噛み付いてくる。
俺は自らの体を、時計の針を模した超巨大な剣へと変形させた。
そこに、アイリスの絶対零度と灼熱、そして全次元の客たちの想いを乗せる!
「これ以上の残業(時間外労働)は、お断りだァァァァッ!!」
「【超時空奥義:クロノス・スライム・エクスカリバー】!!!」
巨大な時計の針(スライム剣)が、時喰らいの顎を真っ向から両断した。
斬ったのは肉体ではない。時喰らいの「時間を奪う力」そのものだ。
パリーーーーーンッ!!!
時喰らいの体が弾け飛び、奪われていた時間がキラキラと雪のように世界へ降り注ぐ。
村人Aに戻りかけていた勇者も、キャベツに戻っていた焼きそばも、すべて元の時間(状態)へと修復されていった。
そして、巨大な化け物だった「時喰らい」は、力を失い……。
ポンッ、というマヌケな音とともに、手のひらサイズの「時計の形をした可愛らしい空飛ぶウーパールーパー」のような姿に縮んでしまった。
「ミュー……?」
「……終わった……のか?」
アーサーがへたり込み、魔王が鉄板の前で息を吐く。
俺は元のスライムのサイズに戻り(色はギャラクシーのままだが、体内に小さな時計の針が浮かんでいる)、地面にボフッと落ちた。
『ナルセ! 大丈夫!?』
アイリスのアバターが駆け寄り、俺の体を抱き上げる。
(ああ。……でも、一つ問題がある)
『何? 怪我したの!?』
(……あいつ、俺が面倒見るのか?)
俺が触手で指差した先には、ウーパールーパーサイズに縮んだ「元・時喰らい」の生物が、「ミュー、ミュー」と鳴きながら俺の足元にすり寄ってきていた。
『……可愛いじゃない。新しい旅館の「マスコットキャラクター」に任命するわ。名前は……そうね、「クロちゃん」でいいわ』
「ミュー!」
(おい、世界を滅ぼす化け物にクロちゃんって……まあ、可愛いからいっか)
かくして、時空崩壊の危機は去り、フェスティバルは無事に再開された。
「巨大怪獣をスライムが一刀両断する」というド派手なショー(※本物の命がけ)を見た全次元の客たちは、「さすが宇宙一のエンターテインメントだ!」と大絶賛し、売上はアイリスの計算すら軽く超える天文学的な数字を叩き出したのだった。
祭りが終わり、静寂を取り戻した夜の露天風呂。
空には、いつもと同じ二つの月と、少しだけキラキラと輝く星雲のゲートが浮かんでいる。
俺は、誰もいなくなった温泉の湯船にでろーんと体を広げ、完全にふやけきっていた。
俺の頭の上には、マスコットになった時喰らいの「クロちゃん」が乗って、スヤスヤと眠っている。
『……本当に、お疲れ様。ナルセ』
湯船の縁に腰掛けたアイリスのアバターが、そっと俺のギャラクシー柄の体を撫でた。
(おう。でも、少しは定休日を作ってくれよ。宇宙一になっても、俺の「のんびり温泉ライフ」の夢は諦めてないんだからな)
『わかってるわよ。明日は丸一日、旅館をお休みにしてあげる。……あなただけの、専属の女将になってあげるから』
アイリスが少しだけ頬を赤くして、ツンとそっぽを向いた。
それにしても、勇者、魔王、天竜、スペース・エルフ、そして時を喰らうウーパールーパー。ねェ。
個性豊かすぎる従業員たちと、宇宙一強くて可愛いツンデレ魔剣。
元・最弱スライム(社畜)の俺が手に入れた異世界ライフは、どうやら永遠に退屈することはなさそうだ。なさそうなんだが。
(よし。とりあえず明日は、昼の3時まで寝てやる……おやすみ、アイリス)
『……ええ、おやすみなさい。私の最高のマスター』
満天の星空の下、スライムの心地よい寝息(空気の泡)がポコポコと温泉に響く。
「ぬるり」
おまえもぬるりしてやる。
されたくない?じゃあ感想書こっか
さあいますぎゅっ!!(殴打音)




