仲居さん
「させん! 『極大・聖絶壁』!!」
勇者アーサーが聖剣を振り下ろすと、空中に巨大な光の盾が出現し、レーザー砲を弾き返す。
「我の番だな! 『超新星・暗黒爆炎』!!」
魔王が両手から放った漆黒の炎が、先頭の宇宙戦艦を直撃。
SFのバリア(エネルギーシールド)を、ファンタジーの魔力による業火が物理法則を無視して焼き尽くし、戦艦を一撃で墜落させた。
『な、なんだあの原住民たちは!? 魔法防御の出力が計算と合わない! というか、あの巨大生物(天竜)はなんだ!? 質量保存の法則を無視しているぞ!』
宇宙艦隊の司令官がパニックに陥っている声が漏れ聞こえる。
(……すげえ。SF世界の住人からすると、魔法って完全にチートなんだな)
俺は縁側でステラ姫を守りながら、空の大怪獣バトルを見上げていた。
だが、敵は腐っても銀河帝国を脅かす大艦隊。
墜落した戦艦の代わりが次々とゲートから現れ、空を埋め尽くしていく。
『ナルセ! このままじゃキリがないわ! 上空の艦隊をまるごと無力化するわよ!』
(わかった! アイリス、完全体モードだ!)
俺の体内にアイリスがスッと入り込む。
ギャラクシー柄のスライムボディに、双極の星剣の白金のオーラが融合する。
「ステラ姫、ちょっと耳を塞いでてくれ。少しだけ、派手にいくから」
俺はそう言い残し、自身の体をバネにして空高く、宇宙戦艦の群れのど真ん中へと跳躍した。
『艦隊のエネルギーコアを狙うわ! 氷と炎、そして星の魔力を全開にする!』
(おう! うちの旅館の露天風呂の広さ、宇宙全域にアピールしてやろうぜ!)
俺は空中で、自身の体を限界まで巨大化させた。
それはもう、スライムというより「一つの小さな星」のような大きさだ。
ギャラクシー柄の巨大スライムが、宇宙戦艦の群れの上に覆い被さる。
『な、なんだあの巨大なゼリー状星雲は!? スキャナーがエラーを吐いている!』
「喰らえ! 【奥義:星間包囲・スライムウォッシュ】!!」
俺は艦隊全体をスライムの体で「包み込み」、体内に蓄えていた宇宙源泉(温泉の成分)と微細な酸を混ぜ合わせた特製エキスを一気に放出させた。
宇宙戦艦の装甲を溶かす……のではない。
戦艦の武器やエンジン機構の「サビ」や「汚れ」を完全に落とし、ピッカピカに磨き上げて機能不全(滑りすぎて摩擦係数がゼロになるなど)に陥らせたのだ!
『ああっ!? 主砲のエネルギーが滑って発射できない!? 機関部からマイナスイオンが溢れて、乗組員がリラックスして眠り始めている!?』
『とどめよナルセ!!』
俺はピカピカに無力化された戦艦群を、スライムの弾力でひとまとめにバウンドさせ、地上に向けて叩き落とした。
もちろん、墜落地点は旅館ではなく――。
ザッパーーーーーーーンッ!!!
裏山に神様用に作った「超絶特大・星間大浴場」のど真ん中である。
戦艦から這い出してきた宇宙服の兵士たちは、武器を構える間もなく、宇宙源泉の心地よい温度と効能に包み込まれた。
「……あ、あったかい……」
「……地球の温泉、最高……。もう銀河の支配とかどうでもいい……帰って寝たい……」
暗黒星間艦隊の荒くれ者たちは、温泉の抗いきれない癒やし効果(と魔王の調合した特製入浴剤)により、完全に戦意を喪失し、ふやけたタコのように湯船に浮かんでいた。
「……信じられない。あの無敵の暗黒艦隊を、温泉に入れるだけで無力化してしまうなんて……」
ステラ姫が、縁側でへたり込みながら震える声で呟いた。
俺はボールサイズに戻り、ぽよんと彼女の膝に乗った。
「まあ、宇宙人だろうと魔王だろうと、お湯に浸かればみんな素っ裸の平等な存在だからな。温泉の力は偉大ってことさ」
『それにしても、宇宙船が何十隻も温泉に浸かってる光景は、いくらなんでもシュールすぎるわね……』
アイリスのアバターが苦笑いしながらため息をつく。
その後。
戦意を喪失した暗黒星間艦隊の兵士たちは、旅館での強制労働(主に宇宙船の技術を使った全自動マッサージ機の開発や、厨房の無重力化など)を条件に罪を赦された。
ステラ姫も「銀河帝国よりここの温泉の方が素晴らしいです!」と言い出し、なぜか中居さんとして宿で働くことになってしまった。
勇者、魔王、天竜、ツンデレ魔剣、そしてスペース・エルフ。
俺がオーナーを務めるこの宿は、ファンタジーとSFがごちゃ混ぜになりながら、ますますカオスで楽しい温泉郷へと進化していく。
「オーナー! シリウス星系から団体客の予約が入りました!」
「おう! 勇者アーサー、裏山の薪(ビームサーベルで切ったやつ)をもっと持ってきてくれ!」
「フハハ! 今夜の夕食は『スペース・ドラゴンの丸焼き』だ!!」
どこからともなく賑やかな声が響き渡る。
俺は縁側で日向ぼっこをしながら、宇宙の星屑のように輝く自分の体をでろーんと伸ばした。
どんな宇宙の危機が来ようとも、俺たちの温泉があれば大丈夫。(誇示)
ゆるく熱くぬるり
押したか?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
押したか?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(大事なことなので二回)




