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スぺースエルフ。銀髪碧眼きりっと

ぬるり

「多元宇宙・最高ランク:星雲五つ(ファイブ・ギャラクシー)」の称号を得てから数週間。

俺たち『スライム&ソード』の従業員一同は、戦々恐々としながら毎日空を見上げていた。


宇宙一の認定を受けたということは、いつ宇宙からトンデモない客が来てもおかしくないということだ。


「オーナー! 星間ゲートの周りに『宇宙船専用の駐機スペース(裏山を削った平地)』を作っておきましたが、本当に来るんでしょうか……エイリアン」

勇者アーサーが、モップを片手に不安そうに空を見上げる。


「フハハ! 案ずるな勇者よ! どんな三つ目の化け物が来ようと、我が魔界のフルコースで胃袋を掴んでやるわ!」

魔王はなぜかエプロン姿のまま、自信満々に中華鍋を振っている。(最近、彼は「宇宙食」の研究に余念がない)


俺(ギャラクシー・スライム形態。元に戻れない。えなんで?)は、縁側ででろーんと平たくなりながらぼやいた。

(……来ないなら来ないで、今の平和な温泉宿のままでいいんだけどな)


『甘いわねナルセ。宇宙一の看板を背負った以上、銀河系全域から荒くれ者が癒やしを求めてやってくるわよ。女将として、接客のシミュレーションは完璧よ!』

アイリスのアバターが、バインダーを叩きながら鼻息を荒くする。


その時だった。


ピコーン、ピコーン、ピコーン……!!


上空に開きっぱなしになっている「アストラル・スライム・ゲート(宇宙源泉の引き込み穴)」から、けたたましい警告音のようなものが鳴り響いた。


「な、なんだ!?」

見上げると、ゲートの穴から、アダムスキー型の古典的なUFO……いや、流線型の超スタイリッシュな銀色の宇宙船が、黒煙を吹きながら落下してくるではないか!


「「「キャアアアッ! 落ちてくるぅぅ!!」」」

露天風呂に入っていた一般客たちが悲鳴を上げる。


『ナルセ! 受け止めなさい! 宇宙船が壊れたら修理代が払えないわ!』

(無茶言うな! でもやるしかない!!)


俺はスライムの体を空に向けて大ジャンプさせ、空中で自身の体を巨大な「トランポリン」のように薄く、広く展開した。

新スキル【ギャラクシー・クッション】の発動だ。


ボヨォォォォォンッ!!!


落下してきた宇宙船が俺の体に激突し、凄まじい衝撃をスライムの弾力で吸収する。

俺はペラペラになりながらも、なんとか駐機スペース(裏山の空き地)へと宇宙船をソフトランディングさせることに成功した。


「ふぅ……死ぬかと思った……」

元のボールサイズに戻った俺がゼイゼイ言っていると、宇宙船のハッチがプシュウウッと音を立てて開いた。


中から転がり出てきたのは、タコでも緑色の小人でもなかった。

銀色のピタッとした宇宙服を着た、尖った耳を持つ絶世の美女――「スペース・エルフ」だったのだ。



「はぁ、はぁ……たす、けて……」

スペース・エルフの美女は、ふらふらと数歩歩いたところで、バタリと倒れ込んでしまった。


「お、おい! 大丈夫か!?」

勇者アーサーが駆け寄り、彼女を抱き起こす。


数分後。

旅館のVIPルーム(一番日当たりの良い和室)の布団に寝かされた彼女は、アイリスの魔力で体力を回復させられ、目を覚ました。


「ここは……? 私は確か、次元跳躍ドライブが暴走して……」

『当旅館「スライム&ソード」へようこそ。多元宇宙・星五つの温泉宿よ。私は女将のアイリス。そしてこっちが、オーナーのナルセ』


俺はぽよんと飛び跳ねて挨拶した。

「……え? オーナーが、星雲ネビュラ柄の軟体生物……? というか、ここ、温泉宿なの!?」

彼女は信じられないといった顔で周囲を見渡した。


彼女の話によると、彼女の名前はステラ。

遥か数億光年離れた『アンドロメダ銀河帝国』の第一皇女だという。


「実は私、追われているのです。銀河を力で支配しようとする悪の組織……『暗黒星間艦隊ダーク・マター・フリート』から!」


ステラ姫が悲痛な顔で告白する。

「彼らは私の持つ『王家の遺伝子』を狙っています。私の宇宙船は攻撃を受けて損傷し、次元の狭間を漂っていたところを、この宿のゲートの光に引き寄せられて……」


なんというスペース・オペラな展開。

ファンタジー世界の温泉宿で聞くような話ではない。てかそんなものよくあるな。ありがちすぎて笑っちまうZE


「フハハハハ!! 笑わせるではないか!」

突然、襖をバーンと開けて魔王が入ってきた。

「暗黒星間艦隊だと? 宇宙の悪がなんぼのもんじゃい! この魔界の王たる我の『暗黒魔力』に比べれば、星屑のようなものよ!」


魔王がマントを翻してドヤ顔をする。

最近、勇者が魔王討伐をしてくれないせいで、悪役としてのアイデンティティが揺らいでいた魔王は「自分より悪い宇宙組織」の存在に謎のライバル心を燃やしていた。


「あ、あなたは……!?」

「我は魔王! 貴様を追ってくる宇宙の悪党など、我が片手で消し炭にして――」


ドドドドドドドッ!!!


魔王が言い終わる前に、旅館の建物全体が激しい地震のように揺れた。

窓の外を見ると、上空のゲートから、空を覆い尽くすほどの巨大な宇宙戦艦が数十隻、不気味な黒光りを放ちながら降下してくるのが見えた。


ステラ姫が顔面を蒼白にする。

「き、来てしまった……! 暗黒星間艦隊の主力部隊です! お願い、皆さん逃げて! この星ごと消滅させられてしまうわ!」



『逃げる? 冗談じゃないわ。今日の予約は満室なのよ! 営業妨害する奴は宇宙人だろうが許さないわ!』

アイリスのオッドアイが、怒りで爛々と輝く。


「そうだ! 俺の宿を守る! いくぞ魔王! 天竜!」

「応!! 宇宙の悪党どもに、本物の魔王の恐ろしさを教えてくれるわ!」

『ふはは! 空の戦いならば我の独壇場よ!』


旅館の裏山から、超巨大な天竜が空へと舞い上がる。

その背中には、モップの代わりに本来の聖剣を構えた勇者アーサーと、フルパワーの瘴気を纏う魔王が乗っていた。


『全艦、主砲展開。目標、眼下の未開惑星の原住民施設。姫ごと吹き飛ばせ』


宇宙戦艦のスピーカーから、機械的な無機質な声が響く。

数十隻の戦艦の砲門が開き、一斉に極太のレーザー砲が放たれた!

おまえも「ぬるり」されたくなかったらブックマークと「☆☆☆☆☆」を押せ。いますぐ。( ´∀` )

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