ミシュ〇ン
男2女2で映画ね。仲間外れってつれえな。。。。。ッ。。。。。。。
「うおおおおおっ! 止まれええええ!!」
俺は、大気圏を突破して宇宙空間の入り口(アストラル・スライム・ゲートふふふ。今俺がつけた)に到達し、自らの体を限界の限界の限界まで平たく広げていた。
迫り来る巨大な氷の彗星と、そこから旅館へ向けてナイアガラのように注ぎ込む宇宙源泉。俺はその「水栓」として、ゲートの穴にでろーんと張り付いたのだ。
(つ、冷たっ! そして息が苦しい! スライムに呼吸の概念があるか知らんが、真空はヤバい!!)
完全に凍りつきそうになったその時、地上から凄まじい熱と光の柱が飛んできた。
『バカナルセ! 戻ってきなさい! あとは私が強引に閉じるわ!』
アイリス(完全体・双極の星剣)の放った【紅蓮の魔力】が俺の体を温め、同時に次元の穴を溶接するように塞いでいく。
俺は「ポーンッ!」とシャンパンのコルクのように弾き出され、重力に従ってスライム温泉郷へと真っ逆さまに落下していった。
ドチャァァァァァッ!!!
「オーナー!!」
勇者アーサーが、旅館の中庭で俺をモップの先で(優しく)キャッチしてくれた。
「ふぅ……生きてる……。俺の定時退社(永眠)はまだ先みたいだな」
俺が安堵のため息(空気の泡)を吐き出すと、周囲の空気が妙に静まり返っていることに気がついた。
アイリスのアバターが、目を見開いて俺を指差している。
『ちょっと、ナルセ……あんた、その体……』
「ん? なんか縮んだか?」
俺は傍にあった水溜まりで自分の姿を確認した。
そこには、いつもの「青く透き通るスライム」ではなく、「宇宙の星雲のように、紫と紺碧のグラデーションに染まり、体内に無数の星屑がキラキラと輝くギャラクシースライム」が映っていた。
(……うわぁ。完全にゲーミングスライムじゃん)
《 称号【神聖なる泥】が【星間を漂う泥】に進化しました 》
神の温泉(彗星)を直接塞いだことで、どうやら宇宙の魔力を取り込んでしまったらしい。
俺がゲーミング仕様になってから数日後。
神様たちが残していった「星屑の温泉」は、旅館の新たな名物『銀河の湯』として大人気となり、ますます宿は繁盛していた。
そんなある日、玄関の暖簾をくぐって、一人の奇妙な客がやってきた。
パリッとした黒いスーツを着て、銀縁の眼鏡をかけ、手にはクリスタルでできたバインダーを持っている。ファンタジー世界には明らかにそぐわない「現代のビジネスマン」のような出立ちだ。
「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」
帳場に立っていたアイリスが声をかけると、男は眼鏡をクイッと押し上げた。
「いえ、私は客ではありません。『多元宇宙・宿泊施設評価委員会』の筆頭調査員、アルファと申します」
(……なんだその、無駄にスケールのデカいグルメサイトみたいな組織は)ってかこいうのって普通の客にまみれてするやつじゃ。
アルファはバインダーにペンを走らせながら、淡々と語り始めた。
「先日、当委員会の主神様より『下界に信じられないほど素晴らしい宿がある』とのタレコミがありましてね。我々審査員は、この宿が『星付け(スターテータス)』に値するかどうか、厳格にチェックしに参りました」
「星付け……つまり、評価次第ではうちの宿が多元宇宙に知れ渡るってことか?」
魔王が厨房から顔を出し、目を輝かせる。
「左様でございます。ただし、我々の基準は極めて厳しい。もし基準に満たない『三流の宿』であった場合、景観保護のためにこの山ごとブラックホールに沈めて更地にさせていただきます」
「「「理不尽すぎるだろ!!!」」」
従業員一同(スライム、魔剣、勇者、魔王)のツッコミがハモった。
かくして、宿の存亡(と地球の存亡)を懸けた、アルファ調査員による恐怖の審査が始まった。
【チェック項目1:清掃と設備】
「ふむ……廊下はチリ一つなく磨き上げられている(※スライムの酸によるルンバ効果)。そしてこの大浴場……驚いた。ただの岩風呂かと思いきや、宇宙の彗星から直接源泉を引いているとは。湯加減も完璧だ(※天竜のブレスによる保温)」
アルファは風呂の湯を少し舐め、深く頷いた。
「……素晴らしい。施設の独自性と清潔感は文句なしだ」
【チェック項目2:料理】
夕食の時間。魔王と勇者が腕によりをかけたフルコースが振る舞われた。
「メインディッシュは、『大王烏賊の星屑マリネ・地獄の業火炙り』です」
「ほう……クラーケンを食材に? ……パクリ。……!!? な、なんと柔らかく、かつ奥深い味わい! 海の幸の旨味と、星の魔力、そして魔界のスパイスが見事に調和している!」
アルファは眼鏡を光らせながら、バインダーに猛烈な勢いでチェックを入れていく。
【チェック項目3:接客と癒し】
そして最後。アルファは浴衣に着替え、縁側でくつろいでいた。
「料理も設備も完璧。だが、名宿たるもの、真の『癒やし』を提供できなければ星は与えられない。さて、貴館の最高のおもてなしを見せてもらおうか」
『ナルセ! 出番よ!』
アイリスの合図と共に、ギャラクシー柄に輝く俺が、アルファの背後にぽよんと飛び乗った。
「な、なんだこの軟体生物は!?」
「失礼します。当館名物、『ギャラクシー・スライム・マッサージ』です」
俺はスライムの体を絶妙な弾力に調整し、アルファの肩から腰にかけて、宇宙の魔力(マイナスイオン的なもの)を浸透させながら、凝り固まった筋肉をピンポイントで揉みほぐしていく。
「あ、ああっ……! な、なんだこれは……! 重力が……まるで無重力空間に浮かんでいるような……いや、母親の胎内に帰ったような圧倒的な包容力……!」
アルファの厳しい顔が、みるみるうちにトロけ、完全に「ふやけたおっさん」へと変貌していった。
翌朝。
アルファはすっかり憑き物が落ちたような、爽やかな笑顔で玄関に立っていた。
「見事です。私の長年の調査員生活において、これほど心身ともに浄化された宿は初めてだ。料理、温泉、そして何より……あのスライムの按摩技術。すべてが規格外でした」
アルファはバインダーから、黄金に輝くステッカーを取り出し、宿の看板に貼り付けた。
そこには、誇らしげに【多元宇宙・最高ランク:星雲五つ(ファイブ・ギャラクシー)】と記されていた。
「これにて、貴館は全宇宙のVIPが憧れる究極のリゾートとして認定されました。いずれ、他の銀河からも客が押し寄せるでしょう。では、私はこれで」
アルファは一礼すると、光の粒子となって消えていった。
「……やったぞ! 俺たちの宿が、宇宙一だと認められたんだ!」
勇者アーサーと魔王がハイタッチをして喜ぶ。
(……いや、喜んでる場合か? 異世界ファンタジーだったはずなのに、これからはエイリアンとかスペースドラゴンとかが泊まりに来るってことだろ!? 俺の仕事がさらに増えるじゃないか!!)
俺は絶望して、縁側でペラペラに伸び切った。
『何言ってるのよ、ナルセ。宇宙一の宿のオーナーになれて光栄でしょ?』
アイリスのアバターが、俺の隣に座ってクスクスと笑う。
『どんな宇宙人が来ようと、私とあなたが組めば敵なしよ。……これからも頼りにしてるわ、私のマスター』
そう言って、彼女は俺のギャラクシー柄の体を、ツンと指先でつついた。
星屑がキラリと光り、心地よい冷気と温もりが俺の体に広がっていく。
勇者が掃除をし、魔王が飯を作り、天竜が湯を沸かし、ツンデレ魔剣が帳簿をつける。
そして、元・社畜のスライムがすべてを丸く収める。
「まあ、いっか。……とりあえず、今日の分の定時退社(昼寝)にさせてもらうわ……」
宇宙一の認定証が輝く看板の下、俺たちの賑やかで無茶苦茶な温泉ライフは、無限の星空へと向かって。
「ぬるり」
この後無事消沈した模様。
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