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火山都市

ちょっとずつ文章力を上げて新しい作品書くときに頑張ろうという

「テスト悪かったな。次がんばろ」(次も言ってる)

                        より。

迷宮都市エーテルでの騒動から数週間。

スライムとアイリス(ツンデレ魔剣)は、次なる魔剣の破片を求めて南へと旅を続けていた。


「魔術師ナル」の変装もすっかり板につき、今ではローブの裾からうっかりゼリーがはみ出しても「あ、新種の軟体魔法です」で誤魔化せるレベルに達している。つまり誤魔化せない。


『……ねえナルセ。地図を広げてドロドロに溶けるのはやめてくれない? 読めないわよ』

(すまん、日差しが強くて蒸発しそうなんだ)


俺は木陰に避難し、広げた羊皮紙の地図を【粘着糸】で器用に丸めた。

アイリスの魔力感知によれば、次の破片の反応は大陸の南東――『火山都市イグニス』から微かに感じるらしい。


(火山ってことは、暑いんだろ? スライムの俺には致死量じゃないか?)

『文句言わない! 私の「つば」のパーツがそこにあるのよ。それに……火山地帯ってことは、アレがあるんじゃないの? あなたがずっと行きたがってた場所』


俺はピタッと動きを止めた。

アイリスの言葉が、元・社畜の脳髄に電撃を走らせる。


(……アレって、もしかして)

『ええ。イグニスは大陸随一の「温泉リゾート」としても有名らしいわよ』


「行くぞアイリス!! 今すぐ南だ! 全速力で向かうぞ!!」


俺はかつてないほどのモチベーションを爆発させ、スライム・エクスプレス(氷のソリ状態)に変形して南の街道を爆走し始めた。

待ってろ、源泉掛け流し!



数日後。

温泉への執念だけで駆け抜けた俺たちは、ついに火山都市イグニスへと到着した。

……だが、街の様子がおかしい。


活気あるリゾート地を想像していたのに、街はゴーストタウンのように静まり返り、道行く人々の顔は一様に暗かった。おまけに、空にはどんよりとした黒煙が立ち込めている。


「……マスター、エールを一つ。この街、ずいぶんと静かだな」

キリっ。キリっ。


俺はいつものように冒険者ギルドの酒場に入り、カウンターで低音ボイス(アイリス駆動)を響かせた。

マスターは重いため息をつきながら、ぬるいエールを出してきた。


「アンタ、よそから来た冒険者かい。悪いことは言わねえ、早く別の街に行きな。この街はもう終わりだ」

「何があった?」

「……火山の主だよ。数週間前から火口の魔力が暴走して、温泉の源泉が全部マグマに変わっちまったんだ。おかげで観光客はゼロ、街は干上がりかけてる」


(なんだと……!? 俺の、俺の温泉が!!)


俺はローブの中で絶望のあまりスライムの体積を半分に縮ませた。

温泉がない火山なんて、ただの巨大なストーブだ。ふざけるな。


『ちょっとナルセ、落ち込まないでよ。つまり、その「火山の主」とやらが私の破片を飲み込んで暴走してるってことでしょ? そいつを倒せば温泉も元通りよ!』


その言葉に、俺はハッと顔を上げた。

そうだ。原因を物理的(あるいは魔法的)に排除すれば、温泉は復活する。


「……マスター。その火山の主、俺が討伐してこよう」

「はあ!? あんた一人でか!? やめとけ、Aランクパーティーでも黒焦げになって逃げ帰ってきたんだぞ!」


マスターの制止を背中で聞き流し、俺はギルドを後にした。

俺の温泉ライフを邪魔する奴は、神だろうが魔物だろうが容赦しない。



イグニス活火山の中腹にある洞窟。そこが暴走の震源地だった。

一歩足を踏み入れると、サウナを100倍にしたような熱気が全身を襲う。


ブクブク、ボコボコ……


(あっ、やば。俺の体が沸騰し始めてる)


スライムの体は水と魔力で構成されているため、熱には死ぬほど弱い。表面から白い湯気が上がり、このままだと「スライムの干物」になってしまう。珍味だ。一回食べてみたい。


『バカ! 何やってるの! 私の冷気で中和するわよ!』


アイリスが慌てて【氷雪世界フリーズ・ドメイン】を微弱に発動させ、俺の体内を内側から冷やし始めた。

外は灼熱、中は極寒。

例えるなら、「熱々の鍋に放り込まれたアイスクリーム」を強引に形状維持しているような状態だ。


(ふぅ……助かった。アイリス、お前は最高の携帯クーラーだな)

『伝説の魔剣をエアコン扱いしないでくれる!? 魔力消費が激しいんだから、早く奥に進みなさいよ!』


道中、溶岩から飛び出してくるマグマ・トード(巨大な炎の蛙)や、フレイム・バット(炎の蝙蝠)などが襲ってきたが、アイリスの冷気を纏った【フロスト・ウィップ】で片っ端からカチコチにして砕き進んだ。

熱気によるイライラも相まって、俺の殲滅スピードはエーテル迷宮の時より遥かに速かった。



洞窟の最奥、巨大な地底湖……ならぬ「マグマ溜まり」の空間にたどり着いた。

そこは、岩肌が赤熱し、息を吸うだけで肺が焼け焦げそうな地獄の中心だった。


「……GUOOOOOOッ!!」


マグマの海の中から、巨大な影がゆっくりと立ち上がる。

岩と炎で構成された、身長15メートルはあろうかという巨人――火山の主『イフリート・ゴーレム』だ。


そして、その巨人の胸の奥、心臓にあたる部分で、強烈な赤い光を放つモノがあった。

青い刃のアイリスとは対照的な、紅蓮の輝き。


『あれよ、ナルセ! 私のつばの破片! あいつ、魔剣の炎の力を暴走させてるんだわ!』

(炎の力? お前、氷の魔剣じゃなかったのか?)

『私は「蒼氷」だけじゃないわ。私の完全体は、相反する属性を統べる『双極の魔剣』なのよ!』


なるほど、だからこんなに熱いのか。

だが、そんな設定はどうでもいい。あいつのせいで俺の温泉がマグマになっているという事実だけが重要だ。


「GRUAAAッ!!」


イフリートが巨大な腕を振り下ろす。

その拳から飛び散る溶岩弾が、ショットガンのように俺に降り注いだ。

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