第二部 meets the world
そして、今に至る。
相手は一直線に突っ込んで来る。小細工無用の、力勝負。
集中しろ。
俺は妖気を拳に集中させる。
読み合いなんてものは必要ない。
ただ、ぶつかるだけ!
「燃ゆる拳・裁」
自分自身の皮膚さえヒリつかせる炎が拳で回転する。それを打ち出し、相手に叩き込む。
相手の蹴りが横腹に当たる。
だが、その痛みは、俺を止めるに値しない。
そのままの勢いで、相手を地面に叩き付けた。
その、一撃。
たったそれだけで、勝負が決まったことを確信した。
胸から迫り上がる高揚。理性や知識とは切り離されて感じる万能感。
これが、勝者が感じる世界なのか?
一撃の疲れや妖力の消費すら、どうでも良くなる。
今すぐに駆け出したい。今すぐにさっきと同じような勝負がしたい。
頭に上り切った血が降りてくる気配など、ない。
毎秒ごとに力が増していく様だった。
俺は衝動に身を任せ、走り出す。
丁度精霊の大群が押し寄せて来た。
俺は無我夢中で殴り倒して行く。一匹、五匹、十匹……。
俺の後ろには、倒した奴。俺の前には、まだ戦ってくる奴。
それだけで、俺の心は煮えたぎっていく。
その時、気づいた。
俺が到達したのは、勝者の世界じゃない。
戦士の世界だ。
理屈もなしに、ただひたすら前へ進む足。
底を感じさせない妖力。
この気分は、しばらく続きそうだ。
気づいたらエント、めっちゃ遠くまで行ってんな。私も負けてられねぇ。
屈伸、伸脚、準備万端!
「エント!私を忘れるなよ?」
エントから感じる、煮えたぎる炎。
その熱さが、私の心を前へ向かせる!
私は思い切って特殊能力を変えた。
尻尾を失くす代わりに、中を浮く二つの拳を手に入れた。
「風来拳!」
自分の起こした風に乗り、前へ!
邪魔なやつは、吹っ飛ばす!
「追いついたぜ、エント。お前の世界に」
エントが一瞬、目を丸くしてこちらを見る。
だが、すぐに好奇心に満ちた顔になって、
「じゃあ……暴れるぞ!」
「だな」
これ以上、言葉は不要!
見据えるは研究所。
それまでにいる精霊たちの攻撃を拳で掻き消しつつ、進む進む。
私は今、かつてない程戦士になったことを喜ばしく思っている。
私とフウガは、間違いなく同じ世界にいた。
他人とは思えない程息ぴったりで、誰よりも互いの事を理解していた。
フウガがいなくなった時から、私は荒っぽく振る舞って、他者を排することしか出来なくなってしまっていた。
でも、フォニックスたちは私を見捨てなかった。
こんなに乱暴な私を、受け止めてくれた。
私が生きられるのは、ここだけだと。そう思った。




