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フォニックス オワリノハジマリ  作者: ことこん
第九章 欲しいものは
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プロローグ copy

一日目:AM十一時三十分


 庭園の様なその場所は管理が行き届いているのに、人の気配が無かった。僕、フィラはさかにゃを地面に下ろしてやる。

「さかにゃ、ここについて何か知ってる?」

「にゃー……ここだけはあんまり来た事にゃかったからにゃあ。でも確か、“所長”の庭だった気が……」

大体予想はついた。僕はさかにゃを抱き抱えて茂みに入り、周囲を警戒した。

段々、一人の妖気が近付いて来る。特別強そうとかでは無かったけれど、何となく分かった。こいつが、この研究所を仕切っている人間なのだと。

「そこにいる事は分かっている。出て来い」

仕方なく、さかにゃを隠して茂みから出る。

「お前は?」

「お前なら分かると思うが?」

「……“所長”か」

「それにしても、まさかこの歳まで正常に生きられるとはな。人工的に人を生み出すという試みは概ね成功と言って良いだろう」

僕が薄々気付いていても考えない様にしていた事を、こうも簡単に告げられてしまった。

「僕に用があるのか?」

「侵入しておいてそれか?まぁ、我が子の里帰りだ、大目に見てやろう」

「僕はお前が親だなんて思って無いし、ただ自分の正体が知りたくて来ただけだ」

「……そう言う所もそっくりだ。良いだろう。ついて来い」

所長はエレベーターを起動させた。僕もそれに乗る。乗っている間ずっと、存在を確かめる様に触れられたのは少し嫌だったけど、あっという間に地下4階に着いた。

研究者たちは所長が現れた事に明らかに動揺し、素早く道を開けてから、僕の存在に気付いて驚いていた。

所長は研究者たちを気にも留めず、僕に話しかける。

「ゼロから作ると言っても、お前はある人間の細胞から作ったんだ。小さいし態度も悪いが、やはりよく似ているな」

「……何の為に?」

「簡単だ。優秀な人間は残して置きたくなるものだろうよ」

「ふぅん」

予想の外を出ない答えばかりで、来る必要なんて無かったんじゃ無いかと思い始めて来た。

「見たいか?お前の母を」

「どっちでも」

所長は迷う事なく入り組んだ通路を歩き、一つのドアを開けた。

……そこには、静かに眠っている女性。黒髪で、青い目。兎ではなく犬らしくて、属性はおそらく水だけど。

「お前は彼女の言わばクローン的な存在だ。まぁ、敢えて色々変えたけどな。お前は唯一の成功例であって、幾度と無く失敗した事も付け加えて置こう」

「彼女は……」

「生きてはいる。そして、彼女こそが」

所長は彼女の髪にそっと指を通す。

「六番……今のスインの実母だ」

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