第四部 born
全員、何も言わなかった。
『多分、このまま生まれても、アイツに喰われて死体置き場行きだよ』
アイツ。
私たちのいない間に、ギルド様含む大勢を殺した存在であり、どうやら魂を吸い取っていく様だ。
その為に育てているのは……『動物』に置き換えればそこまで珍しい事でも無くなってしまう。
ドラセナさんも同じことを思っていた様だ。
「メダカに食べさせる為に、ブラインシュリンプを育てます。
ゲンゴロウに食べさせるために、メダカを育てます。
まぁ、これらを食べるのは、幼生なのですがね」
と話すのを聞いて、
「そうなんかもしれん。
二年前のキリュウの目撃情報では、幼い見た目やったみたいやし」
「じゃあ、今はなん」
と、ドラセナさんが言葉を途切れさせてしまう程の事が起こった。
十個のカプセルから水が流れ始めた。
「お二人は、別の部屋へ」
と、ドラセナさんは私から離れる。
『今広間も塞がってる。
だから、一回外に出て。丁度、片付いたみたいだから』
という師匠の言葉を信じて、私たち二人は部屋を出た。カプセルからの水が、部屋の外まで流れていく。
コナさんは精霊たちと戦っていた。
次から次へと押し寄せており、とてもすぐにはケリがつかなさそうだった。
私たち二人は南へ進み、建物から脱出した。
さてと。これはどうすれば良いのでしょうか。
『ドラセナ、本当に大丈夫?
誰かを呼ぶ事なら出来るけど……』
「お気になさらず。上手くやってみせますよ」
フィラは善意で言っているんだろうけど、それは僕が弱いと言っている様なものですよ?
とはいえ、彼らは既に僕を敵だと認識している様だった。
久しぶりのピンチ。それも、一人で。
フィラは自分は天才じゃないと言う。
でも、私からしてみれば、あなたもれっきとした天才の一人なんですよ。
どれだけ頑張っても、何も勝てずサポーターをやっている。
……結局、自分は本質を変えられていない。
人の顔色を窺って、どうすれば怒られないか、どうすればここにいられるか。
どうすれば、愛と交換出来るものを相手に差し出せるか。
ずっと、ずっとずっとずっと、そう生きて来た、あの日々は染みついたままで。
僕は、もう、変わるには続けすぎてしまった。
目の前には、祝福されない存在たち。
きっと、これからの人生、自分が生かしたとて、苦悩に満ちているのだろうと思うと。
生かしておいて良いのか、逆に迷ってしまう。
これは僕のエゴだ。
僕は今、危機を迎えている。
変わるなら、もう、今しかない。




