第三部 quiet journey:胎
一日目:AM七時十六分
私たちは部屋に入り、ドアを閉めたのを確認し、電気を点ける。
真っ白な円柱が整然と並んでいた。
一見ただの柱に見えるけど、なんだか易々と触れてはいけない感じがする。
これらは、僅かながら妖気を放っている。
……出来れば、妖石であって欲しいけど……残念ながらそんな感じではない。
「もうちょっと色々やってみるね」
とテイラーさんはこの雰囲気にも動じずハッキングを続けていた。
ドラセナさんが円柱の一つにそっと手を触れる。
すると、カチッ、と小さく音がし、柱の表層が地下に沈んだ。
円柱の中身は、カプセルだった。ガラス越しに中身が見える。
液体で満たされた中で、人が眠っていた。
もう見た目は大人で、簡素ながら服を着ているが、まるで母親のお腹の中にいる様だった。
「……気味が悪い」
ドラセナさんと一緒に他のものも開けてみる。
成長段階には非常に差があるが、全て同じ様子だった。
唯一違うのは、大人の見た目の人には頭に何か取り付けられているという事だ。
合計二十人。
私はドラセナさんと話し合う。
ちなみに、私はあのことを機にここから来た事を話した後だ。
「あなたがいた時、こんなものは見かけましたか?」
「多分被験体やったから、あっても存在は認知できてないかもしれん。
……ただ、この素材の床でここまで真っ白やし、新しいんちゃうかな」
学校の廊下でよく見る素材。
古ければ、黒ずんで来るだろう。
「あと、一つ決めかねているのは、彼らが人間であるかどうかです」
『胎児は一人の人間か』という問題。
これはおそらく、宗教とか、信条とかで答えが変わってくる。
でも確かに、こんな感じで機械から生まれて来るのであれば、人であるとも言い切れない。
これは多分、すぐに決めちゃいけない事だ。
「それは、私にも分からへん」
『僕もあえて決めはしない。
自分の倫理と道徳が欠落してる事くらい、自覚してるし』
と師匠も参加して来た。
『それに、まだ確定じゃないけど、僕も彼らの一部かもしれない』
確かに、師匠の証言とは一致しそうだ。
ただ、彼らに目を覚ますような気配は一切ない。
「そうですか」
ドラセナさんはそのまま、テイラーさんに話しかける。
「この部屋の電気って、落とせますか?」
……いや、どっちが正解とかはないけどさ。
ある程度育っている人ならまだしも、本物の胎児みたいな状態の人は?
……どうにも、煮え切らない。
「一応出来るけど、やんの?」
「……」
ドラセナさんにも、迷いがある様だ。




