第四部 わからないこと
キリュウは楽しそうに僕らを煽って来るばかりで、攻撃なんてする素振りはどこにもない。なんか楽しそうだけど。
「で?攻撃して来ないの?」
「え?だって、殺す前にちょっとでも遊んでおきたいじゃんか〜」
完全に舐められてるな、これは。
「そんなだから、君は『キリュウ』なんだろ。
……って言っても、君みたいな奴に意味なんて分かりっこないか」
随分安い挑発だ。でも、キリュウは途端に面白くなさそうな顔をした。
「……やっぱボク、キミのこと嫌いだ」
キリュウは炎をその手に宿した。小さくても、底なしの力を孕んでいるのを感じた。
「そ」
僕はガードを張った。気休めだけど。
キリュウの放った炎は、僕のガードなんて空気同然と言わんばかりに貫通して、僕のいた所を焼き尽くした。
「あはは、キミ、努力すれば天才にもどうとか、言ってたみたいじゃん?」
それを言ったのは、記憶の中で一人しかいない。
「……スインから?」
多分スインが伝えたというより、スインの見聞きしたものがこいつらに共有されてるって感じか。
「うん、そうだよ〜」
キリュウは楽しそうに何発も火の玉を飛ばして来る。研究所がどんどん壊れているような気がするけど、それは良いんだろうか?
「レオン、どう?」
「普通に当たりたくねーな」
「だろうね」
避けれない程じゃないけど、まさかこれが本気な訳ないだろう。ジワジワ量を増やして行って、逃げられなくするのが狙いなんだろう。
なんか、こいつの考えてる事、よく分かるんだよね。なんでだろ。
……ちょっと怖いな。
「レオン、ワンチャンに賭けよう」
「なんだ?外に出るのか?」
「もし出たって、きっとキリュウも出れるんだろ?それに、あの狭い通路で技を出されたらどうするんだよ」
「……確かに」
実験体が出れて、部外者は出れないなんて。普通逆だと思うんだけど。
「地下に行こう」
「……分かった」
キリュウの火球を避けながら吹き抜けまで行き……跳び降りた。
「え!?ちょっと待ってよ!」
キリュウは振り切れそうだ。
ここから先、地獄が待ってるのは想像に難くない。でも、どうせ死ぬなら、知りたいじゃないか。
僕について。
結局、レオンとは空中で別れてしまった。
着地はとりあえず落ちる途中で柱に蔦を絡ませてしたから、大丈夫だったけど。
相変わらず無機質な部屋だけど、腐っているような、ちょっと食べ物っぽいような、でも不快な動物の匂いが漂っている。妖気的に普通に人いるけど……こんな所にいたら鼻がおかしくなりそうだ。




