第二部 “里帰り”
一日目:AM十時
色々あったせいで歩き出すのは遅れたけど、正午には歩いてても間に合いそうだ。
街を離れると、森に入っていく。まぁ、この森の一角に僕らの本拠地があるし、迷う事は無いと思う。けたたましい鳥の声も、青臭い匂いも、吹き抜けて来る風も。その全部が、僕が慣れ親しんだものだ。
その森を抜けると、僕が修行したり本を読んだりした草原に出会う。数年前ボロボロにした所も、今では春が芽吹き始めている。
「……なぁ、フィラ」
余りに僕が景色ばかり見ていたからか、レオンが気まずそうに話しかける。
「ん?」
「……なんでもない」
変なの。
再び沈黙が流れ、例の鳥の声がそれを誤魔化す様に響く。
草原を抜け、また森を抜け、そびえ立つ崖をレオンに乗って越える。
「フィラ」
「また?」
「フィラは、こんな長い道のりを、一人で逃げて来たのか?」
「多分ね。正確には、セイと出会ったのはさっき抜けた森の方だけど」
「でも、まだまだ道あるじゃん」
「あの時はそんなの大した問題じゃなかったんだよ。追手の攻撃で出来た傷を、時を止めて誤魔化して……ひたすら走ってただけだから」
「……フィラは凄いな。俺と戦った時も思ったけど」
「そう?馬鹿だっただけだと思うけど」
「フィラが自分を下げるなんて珍しいな」
「『自分』じゃなくて『過去の自分』だよ。一年前、ひいては一ヶ月の自分を見下せるぐらいじゃないと成長出来ないじゃないか」
「……相変わらずだな」
そんな事を喋りながら歩くと、チラホラと精霊たちが見え始める。
「本当にみんなを帰して良かったのか?」
「うん。アイツは多分大人数で行った方が不利になるし。あの二人のお陰で数は大分少ないよ」
僕は精霊を消し飛ばして行く。
「ひょえ〜、容赦ねーな」
「何を言われても、僕はこんな所で躊躇ったりしないよ」
そういう意味で、僕とフォニックスは相容れない部分がある事は自覚してるけど。
そのまま進んでいくと……とうとう、研究所が見えた。
「ここか?」
「間違いない……と思う」
頭の中の朧げな記憶をなんとか繋ぎ合わせても、この一周回って不気味な建物の外観だけでは判断がつかなかった。
現在時刻午前十一時。僕たちは北から研究所に足を踏み入れた。
「入れるのに出れはしないのか……?不思議だな」
「しかも、スインは出れてたし、昔僕も出れてた」
「……意図が分からねぇな」
なんだかんだ歩いて行くと、中央にはコナと敵を拘束しているサリィがいて……頭上にはステンドグラスがあった。




