プロローグ それを愛だというのなら
一日目:AM九時半
僕、フィラが歩いていくのを、追いかける気配が一つ。
「……もうとっくにバレてるけど?」
すぐにレオンが目の前に現れる。
「……悪い」
「僕一人で良いって言ったよね?」
「……そうだな」
「なんで来たのさ。まさか僕の言った事が本当は来て欲しいって意味だと思ってる訳じゃないだろ?」
「それはそうだな」
「じゃあ戻ってよ。今はレオンが邪魔なんだから」
「そこまで言わなくたって良いだろ!」
「……」
馬鹿みたい。本当馬鹿だ。こんな言い争いをしてる場合じゃないのに。変な事を口走った自分を恨みたい。
「レオン……一個だけ言うからさ、それで帰ってよ」
「ん?」
レオンが僕の声を聞こうと屈む。
「僕が大事なら……ちゃんとケリをつけさせてよ」
「……」
僕は狡い。レオンが何も言い返せなくなる様な事を、知ってて言うんだ。こうやって。
レオンはその場に立ち尽くした。
「……行くから」
それだけ残して、僕は前へ進む。今更振り返るなんて出来ない。
そう思っていた。
レオンはまたしても僕の前に立った。
「……フィラ。お前は賢いから、言い合いじゃ勝てない。……戦いでも勝てないけど。だから、ちゃんと伝える」
前に進んだり、目を逸らしたりという様な会話を遮る行動は、真っ直ぐな目をしたレオンの前では思考の外に追いやられた。
「俺は、お前らがそうしてくれたみたいに……お前の苦しさを、一緒に担いでやりたいんだよ!」
「……なにそれ」
僕は自分の足元を見つめる。
「とにかく付いてくからな!」
「……なんで」
「ん?」
「なんで、こんな時に限ってレオンは馬鹿正直なんだよ」
若干声が上擦った事、レオンにバレただろうか。どうやら、レオンも狡いらしい。
「……だから言ってんだろ。大事だからだって。フィラは自分の身が削れても構わず戦うって知ってるからだ」
「……そうだけど」
もしかしなくても、僕の考えていた事がバレてしまっているのかもしれない。レオンに勘付かれるなんて、僕も随分と間抜けになったらしい。
「とにかく、あのキリュウってやつの炎を一人でどうにかしようなんて思うなよ」
「……分かった。そんなに付いて来たいなら来たら?」
レオンは笑い出す。
「なんだよそれ」
「うるさい。レオンの馬鹿。ほんと馬鹿。ばか」
僕はレオンなんか見ずに歩き出す。
悔しいけど、結局、離れられなかったのは僕も同じだったらしい。本当に、意志が弱すぎる。
これを愛と呼ぶのなら、なんて不可解で粘っこいものなんだろうか。




