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フォニックス オワリノハジマリ  作者: ことこん
第七章 innocent devil
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第四部 love

 人には、忘れたい記憶というものがあるらしい。

僕で言えば、誰でも言う事を聞いてしまった故に起こった事になるのだろうか。実際、この火傷は……“僕のせい”だ。あの熱さははっきり憶えているし。

目の前にいる、破壊神と呼ばれている人間も、まぁそんな感じなのかなと思った。

僕は多分愛を分かっていない。

誰かの言う事を聞いて、喜ばせる。それが愛の伝え方。それしか分からない。

でも、チビさんは不思議だ。

僕と同じ事をしている筈なのに……どうして、どうして……こんなに羨ましく映るんだろう。

……あるいは、ミサさんの態度からなのか。


 俺には、忘れたい記憶があった。最悪だ。謎の能力のせいで、けたたましく頭の中で鳴り響く。あいつの声が。

セナちゃんには、こんな人がいるのだろうか。と、考えたけどやめた。多分、こいつの手は黒く染まってるだろうから。俺と似て非なる様に。

俺は多分愛から目を背けてる。

遠回しに守る。それが愛だと伝わらない様に。

……そういう意味で、チビは変な関係になってしまった。

それを、セナちゃんに気付かされた気がする。


 互いの瞳が見つめ合う事、数分。

僕は、気づけば問うていた。

「愛ってなんですか?」

こう返って来た。

「俺の嫌いな言葉だ」

「そうですか」

嘘なのが分かった。

「どけ」

「嫌ですと言ったら?」

「殺す」

「嫌です」

互いの語彙が消えていく。

「そうか」

ミサさんは僕を後ろに転ばせ、上から腕を押さえつけた。後頭部に鈍い痛み。

「これで、セナちゃんは大人しく食われるって訳だ」

「嫌です」

「あ?」

ミサさんが凄む。

「死ぬなと言われたので?」

「は?」

雰囲気に不似合いな素っ頓狂な互いの声が響く。謎の沈黙。それを破るミサさんのため息。

「どっちが良いですか?」

「何だよ、鬱陶しい」

「僕を齧れば……凍りますよ」

「……成程な」

舌打ちが聞こえる。

「どうしますか?」

「……別に、お前を殺してから食えば良いだろ」

「……それは困りますね」

「一旦黙っとけ」

鳩尾に急な圧迫感を感じる。

あまりの痛みと苦しさに悶えていると、離される。

「楽に逝かせる気はねぇよ」

返事も出来なかった。腕に爪を立てられる。

「……っ」

痛みに耐えながら、僕はミサさんの目に息を吹きかける。ミサさんの右目が開かなくなる。

「……良い加減にしろよ」

「……殺されるのは、愛してくれる人が良い……母の最期の言葉です」

「じゃあ、愛してやるから殺させろよ」

「どうやるんですか?」

「……」

ミサさんは、僕を置いて部屋を出た。

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