第三部 why
ドラセナです。
今まで、人に言われた事は従った方が良いんだと思っていました。そして、恐らくそのお陰で僕は生き延びて来ました。
でも……さっきようやく気づいたんです。それには例外があるんだと。
フォークを投げた瞬間、ミサさんの顔を伺ったんです。怒ってました、絶対……。咄嗟に、謝ってしまったくらい。
僕には行動原理が分かりません。人に言われたからやった、としか言えないんです。ずっと、そう生きて来ましたから。
かつて、従者が追手に殺された時……最期の言葉は「殺す」でした。だから僕は殺しました。その時はみんな、喜んでくれました。
……でも、それだけじゃ駄目だったんですね。
何が「良い事」で、「悪い事」なのか、全然分かっていなかったようです。
……確かに、人を傷つけるのは良くないというのは分かっていない訳じゃありませんが……だって、殺したらみんなが喜んでくれる事だってあるんでしょう?
だったら、僕に避ける理由なんてありません。
だから、思ったんです。
「何をするか」よりも、「誰の為にやるか」を大事にしようって。
なら、今僕がやる事は一つでしょう。
「おい、お前……殺されたいのか?」
戻って来たミサさんはまだ怒っていた。まぁ、気にする必要はないって分かったので良いんですけどね。
「あなたは殺したいんですか?」
向こうが言葉に詰まる。でも、そろそろ限界が来たらしく。首元めがけて水の弾丸が飛んで来た。しかし……首には妖気封じの首輪。
「……やっぱそれ、外す」
乱暴に外され、床に投げ捨てられる頃には……僕はミサさんに馬乗りになっていた。
「……テメェ」
「決めたんです、僕は変わると。……自分の意思で、あなたを足止めすると」
『ニアさん、お願いします』
僕は弱い。一人じゃ何も出来ない。もっと言えば、行動原理すら分からない。
でも、従う相手は決める事にした。
ニアさんは急に現れて、“能力”を使う。
「『自責の記憶』」
ミサさんの力が抜け、心底怯えている。やっぱり、色々複雑な過去を抱えていたようだ。
僕たちの様子を見て、ニアさんはチビさんに見つかる前に消えた。まだ妖気での会話は続けながら
僕はミサさんを見下ろしながら、静かに語りかける。
「会いたいですか?妹さんに」
「ッチ……殺す」
ミサさんは完全に頭に血が昇っていて。瞬きの間に襲って来そうだった。
僕が技を発動させようとした時、ニアさんの声が聞こえた。
『死なないでね』
「……了解です」
僕は、その七文字に弱い。




