第二部 murderer?
とりあえず、飯を食わせる事にした。セナちゃんはカルボナーラをフォークで綺麗に食べて行く。
俺が言葉に詰まっていると、セナちゃんは周囲を見回し、
「そう言えば、ここ、地下なんですね」
なんて言ってきた。
こいつにとって、自分が人殺しであるという事を突き付ける会話は、ただの世間話だとでも言うのか。
「……まぁな」
「どうしてですか?」
「……チビの為だ。チビは“吸血鬼”で、日光に弱い。それだけだ」
名前を呼んだからか、チビがこの部屋に入って来る。
「面倒に思わないんですか?」
「は?面倒だったら殺してるだろ」
セナちゃんの目の色が変わった……と思ったら、その手からフォークが消えていた。フォークは、チビがいた壁に刺さっていた。
「……あ、ごめんなさい……」
セナちゃんの口からそんな声が漏れる。
「駄目ですね、癖が一向に治らない……」
「……お前……」
一瞬、その身体を水に沈めてやろうかと思った。こいつ、チビにやった事を反省してるんじゃない、俺の言葉を真に受けた事に反省してる。
でも……ここで殺ったら、俺の中の何かが崩れる気がした。
セナちゃんの腕を再び縛る。
「なぁ、仲間はお前がやった事、知ってんのか?」
「全く知りません」
即答かよ。まぁ、確かに人を殺した奴の雰囲気じゃないな。
「……セナちゃんは、自分が人殺しだって事どう思ってるの?」
「確かに、やり過ぎましたね……」
まぁ、普通反省するよな。
「これからは、ちゃんと考えてから行動します」
「……セナちゃん、それ本気で言ってる?」
「はい」
「普通、人殺しって駄目な事だろ?」
「あなたがそれを言いますか?」
「……黙れよ」
「……」
何だか落ち着かなくなって、俺は部屋を出た。
どうやらあれは……相当厄介な人種らしい。
普段は攻撃性の欠片も無い顔をしておきながら、そろりと死の影を落としていく、この感じ。
チビが心配そうに俺を見上げで来る。
「チビ、怪我はないか?」
チビは大きく頷く。
「あいつの部屋には、もう入らない方が良い。掃除も出来ないが……それでもだ」
チビは頷く。しかし、すぐに俯く。
「……俺も、あんな奴は初めてだ。でも、あいつを今お前を襲ったって理由で殺せば……俺が自分で言った事と矛盾する……」
チビは拳を強く握りしめる。
「……チビ……」
チビはズカズカとキッチンに引き上げて行った。
俺は馬鹿だ。いや……あいつはそれを見越して俺にああ言わせたのか?
……俺は、チビの為にあいつを殺すべきなのだろうか。




