プロローグ foolish
俺、ミサは目の前のドラセナことセナちゃんを見つめる。人畜無害そうで、大して取り柄のない……ように見える。事実、その瞳に翳りはなかった。
「なぁセナちゃん……気付いてるか?」
「はい、なんですか?」
本人は上手く話して誤魔化そうとしているみてーだけど……半分諦めてるだろ。
「めっちゃ、俺たちと同類の匂いがするんだけど」
「……やっぱり、バレてましたか」
セナちゃんはイタズラに失敗した子供のような顔をする。……大人しい子ぶってやがるな。でも、その仮面はすぐ外してやるよ。
「喰われたくなかったら、セナちゃんの事教えろよ」
セナちゃんは一瞬心底驚いたような顔をし、
「……それだけでいいんですか?」
なんて言う。マジで本音と建前の区別がつかねーな。
セナちゃんは静かに語り始める。
「……僕、人に言われた事を真に受けすぎる所がありまして。今思えば、ちょっとやっちゃったなって事があるんですよ。
僕、幼いなりに同年代の子たちと過ごしていたんですよ。先生は言う事さえ聞いていれば優しくて、友達と一緒にいるのも楽しかったんです」
優等生アピールってか。それを純粋に言ってるんだから余計腹立つな……。
「ある日同級生に屋上に呼ばれまして、急に『死ね』って言われたんですよ。
普通は無視すればいいのに、真に受けて飛び降りようとしちゃいまして……先生には心配されましたね……」
「なんだそれ。被害者面してんじゃねーよ。
……てめー人殺した事あるだろ」
セナちゃんは首を傾げる。
「確かに……あれは殺したに入るんですかね?」
……こいつ、隠すとか以前の問題だろ。自覚してねぇのか?
「確かに弟の入った洗濯機のスイッチを押したら死んじゃいましたけど」
「それ普通に殺人だろ」
「確かに……?」
「本気で言ってんのか?お前がやったことで人が死んだらそれは殺してるも同然だろ……」
「あ、そうなんですか」
なんで純粋に驚くだけなんだよ。おまけに、
「それより前に自分が遊びで入っちゃって、お手伝いさんに『洗濯機に入ったら回しますよ!』と言われたんですが、やらない方が良かったんですかね?」
なんて言って来る。……こいつ、よく捕まらなかったな……。
「そりゃそうだろ。冗談で言ってたに決まってるだろ。普通人をそんだけで殺さねーよ」
「あ、やっぱり……冗談だったんですね」
そっちじゃねーよ。弟にはなんとも思ってねーのか?
「こんな兄を持って、弟も運がねーな」
「そうですね……洗濯機で死ぬの苦しそうですもんね」
ややこしい奴だな……。




