第二部 who
「じゃあ、俺のことミサって呼べよ。これで平等だろ?」
向こうは無理矢理肩を組んでくる。
「本名ですか?」
「んー、一応。セナちゃんは?」
「これはリーダーに付けてもらった名前です」
「へぇ、本名は?」
ミサは顔を近づける。
「さぁ?小さかったので、忘れてしまいました」
「え〜、本当のこと教えないと、普通に食うぞ?」
「人を普通に食う人間はいません」
「そりゃーごもっとも。俺は普通じゃないんでな」
「仕方ないですね。
僕の本名は、セリーチェです」
ミサは少し右上を見た後、
「もしかして、あの?」
「知ってましたか?」
ミサはケラケラ笑い出す。
「知ってるも何も、超有名な事件じゃん」
『セの一族』。
セの一族は元々、王族に次ぐ程の貴族であった。
王族と同じようにセの字を名に冠し、側近含め世界中の国の中核を担うことで有名で。
それ故に、権利争いの熾烈さは時に王族よりも酷かった。親兄弟で血を流す……いわゆる血を血で洗う状況だった。
それ自体は特に珍しい事ではなかったものの、彼らは少しばかり、やりすぎた。
結論から言うと、後継ぎどころか一族の人間が減りすぎて、結局五人程度しか残らなかった。
どうしてそんなになるまで戦い続けたかなんて、知る由もないけれど。
「セナちゃんはそん時生きてたんだっけか」
「子供でしたけどね」
「へぇ……よく生き残れたなぁ。しかも男だろ?普通潰し合いに巻き込まれそうだけどな」
「子供だったので、知恵を働かせばいくらでも方法はありますよ」
「例えば?」
「それくらい、自分で考えてみたらどうですか?」
「え〜、俺、考えるの嫌いなんだけど」
「そんなあからさまな嘘、ついても意味ありませんよ?」
ミサは口を尖らせ、
「セナちゃんの意地悪ー」
なんてふざけているけど。
「単純な話ですし、僕が考えついた訳でもありません。
幼児の性別なんて、どうとでも誤魔化せると思いません?」
「じゃあ、マジでセナちゃんだった時期があるってか」
「……まぁ、そうなりますね」
「でも、セナちゃんがそんだけの奴とは思えないんだよなー」
「どうしてですか?」
「だってさ、その理屈で行くと男以外殺される意味が分かんねーし」
「色々あったんでしょうね」
「セナちゃんは覚えてないんだ?」
「勿論。いくつだったと思ってるんですか」
「へぇ……おかしいなぁ、じゃあ、家にいた中で生き残ったのがセナちゃん一人なのも偶然?」
「ええ」
「ふぅん……」
ミサはじっと見つめて来る。
わざわざ聞いて来るのは建前で、本当は分かっているのかもしれない。




