page.20 この男、聖者にあらず 3
鑑時「迷っていた」
遊「まったく…」
遊は額を押さえ落胆していた。
遊「今の状況は分かっているのか?」
鑑時「心頭滅却をしていた。それでこの惨状を感じて馳せ参じた次第だ」
遊「ならいいが…それでブレイブ、もう1人の場所はどこにある?」
ブレイブ「ここから南東に100mほど離れた位置にハットを被った…おそらく魔族がいる」
ブレイブは再び頭痛が走り膝をついた。上がった息を整えるのに必死だった。それを見た遊は肩に手を置いた。
遊「時間が経ちすぎたな…少しそこで休憩をしていてくれ」
鑑時「我らで討ち取ってこよう…!」
一方、弾とソトー
弾の周りには血が飛び散っており、見るものによっては貧血で倒れてしまうような惨状だった。だが、弾はその場で立ち続けてソトーを睨み続けた。
有利にいるはずのソトーはこの逆転しているかのような状況に困惑をしている。
ソトー「なんで倒れねぇんだよ、てめぇは!」
弾「アイツらが打開する方法を見つけて、お前にこれまでくらった屈辱を浴びせるまでは倒れねぇよ」
ソトー「この、野郎!!」
再び弾を殴り始めるソトー。
遊と鑑時は、ブレイブの言った南東に100mを目指し走っていた。すると、物陰で弾とソトーを見ていた魔族タグを発見した。
鑑時「あやつか?」
タグ「おっと、もう見つかったか」
膝立ちをして傍観していたタグは横目で遊達を確認した。弾達をチラ見しながら後退して遊達と距離を取った。
遊「どうやらそのようだ。処理を始めるぞ」
タグは建物の間をリズムよくすり抜けて撒こうとする。しかし、遊達は逃さずしっかり追い続けた。
タグ「しつこいねぇ、こっちには仕事があるってのに」
遊「それはこちらもだ。お前には消えてもらう」
一足早くタグに追いついた遊。中段蹴りを脇腹に食らわせた。その瞬間、鑑時の脇腹にも同様のダメージを受けた。
タグ「ふっ!…ん!?」
鑑時「南無三」
遊「なるほど」
鑑時は攻撃の反動はあったようだが、ダメージ自体はなかったようだ。とてつもなく鍛え上げられた身体と精神だ。
タグ「…これは分が悪いか…?」
鑑時のリアクションに戸惑い、先程までの余裕がなくなり建物の中へ逃げ込んだ。
遊達は入った建物の前で立ち止まった。その建物はビルまでは行かないが10階くらいはあるような縦に長い建物だ。
遊「鑑時、この建物の情報を」
鑑時「承知した…『不可侵絶対領域』」
鑑時はその場で合掌しえ気を溜めた。鑑時を中心に数メートルに結界のような白い枠が広がった。その結界は建物を包み、鑑時は読み込んだ。
鑑時「中には魔族以外はいないようだ。どうする下手に追いかければ窓から逃げる可能性がある」
遊は建物を見つめた。
遊「そうだな、私が追いかける。だから鑑時には…」
鑑時「皆まで言うな、承知した。我はここから動けぬゆえ、ご武運を」
遊は建物に侵入して階段をかけ昇った。途中でタグを発見し、相対した。6階に達したとき、タグは窓から降りて逃げようとする仕草をみせた。しかし、突如として窓の近くに壁が出現して退路を塞がれてしまった。突然のことに理解が出来ないタグだが、ここから逃げねばいけないことは本能として感じ取った。無心で階段を昇った。
タグ「(なんなんだよ…今の壁は!こいつの仕業か?いや、能力を使った風には見えなかった。と言うことは、外にいるハゲの方か!)」
外で結界を張り続けている鑑時。常にタグの周りに壁を出現させて逃げ道を一点に集中した。そう、屋上だ。
タグ「くそっ!追い込まれたか!ならここでてめぇをぶっ殺してやるっ!」
タグは逃げれないと悟り、遊へがむしゃらに攻撃を始めた。しかし、遊は品のある身のこなしで攻撃をいなして、タグへ細かくダメージを与えた。さらに、回し蹴りをタグの両目にめり込ませた。
当然、タグは目を押さえて倒れこんだ。
タグ「くそぉ!いてぇ!いてぇ!この野郎!」
遊は乱れた黒と白のストライプスーツを整え埃を払った。
遊「お前のスキルは、視線の中にお前とダメージを与える者以外にもう1人、つまり第三者がいて初めて使えるようだ。それを認識する目を潰せばもう使えまい」
タグは、自分の能力ないしスキルを言い当てられ、さらに命の危機を感じてパニックを起こした。
タグ「おぉう!助けてくれ!俺は魔王に脅されてこんなことしてんだ!おれは被害者なんだ聖者様よ許してくれ!!」
タグは、目を押さえながら土下座をして命乞いをした。その様子を冷ややかな目で、レ◯プしてくせに同意の上でしたと言い張るゲス野郎をみるような目つきだ。
タグは、服の下に隠していたナイフに手を伸ばした。一か八かで刺し違えてやろうとしていた。
タグ「許してくれぇ!!(くそ!くそ!絶対殺してやる!この下等生物がぁ!!)」
遊「命乞いはそれだけか?」
遊はタグの腹に強烈な蹴りをお見舞いした。服の中に隠したナイフを取り出そうとしていたために、刃先がタグ自身に向いて蹴りの勢いで腹に刺さってしまった。
タグ「ああぁ!!くそったれ!刺さっちまった!おれのナイフがぁ!」
遊「お前のような奴が考えそうなことだ」
遊はスーツの中からハンドガンとサプレッサーを取り出した。チャンバーを少し引き弾丸が装填されていることを確認、その後にサプレッサーを銃口に取り付けた。
カチャカチャと音をたてており、視力を奪われているタグには何をしているのか見当もつかなかった。しかし、恐ろしいことをこれからするのであろうと容易に想像がついた。
タグは逃げようとした。だが、恐怖で足がすくみ力が入らなかった。荒い息をたてて手で払う仕草しか出来なくなっていた。
遊「お前は聖者だと言っていたな…何か勘違いしているようだ」
遊はゆっくりハンドガンをタグに向けた。
遊「俺は反社会的勢力の一員、聖者などからは程遠い存在だ」
鑑時「南無」
ピュンピュンピュン サプレッサーにより銃声は響かず風の中へ消えていった。そして、その場には頭に3発の弾痕ができたタグが、ただ動かなくなっていただけであった。
少し前に遡り、ソトーは弾を殴り飽きたといい少しの間ができていた。
ソトー「はぁはぁはぁ…ちっ!」
ボタボタと落ちる血がどれだけの攻撃を受けていたかを物語っていた。ソトーは何か他のことで痛めつけれるか周りを見渡し、ふとゲスな思い付きをした。
ソトー「殴り飽きたなぁ、お!あそこにガキの女がうずくまっているなぁ」
ソトーがみた先には逃げ遅れた10歳くらいの女児がいた。おそらく母親とはぐれたのであろう。
ソトー「おい、そのガキの女がをここへ連れてこい」
ソトーは強気に命令をした。弾は反抗せずフラフラとした状態で女児に近寄った。
弾「大丈夫だ、ぜってぇおれが守るからよ」
弾は、女児をおんぶしてソトーの前まで戻ってきた。
弾「連れてきたぞ。どうするつもりだ?」
ソトー「どうするつぅもぉりぃい?そんなもん犯すにきまってんだろぉ!?もちろんするのはてめぇだがな!下等生物におれのち◯ぽ挿れたらどんな病気になるか分かったもんじゃあねぇ!!」
弾「てめぇ…!」
弾におんぶされた女児は、ソトーの言うことの意味は理解できないがとてつもなく危険が迫っていると感じ取って鳴き始めてしまった。
ソトー「泣いてんじゃあねぇよこのガキャ!早くその短小のち◯ぽをそいつのま◯こにぶちこめ!ガキが喘ぐまで腰をふり続けろよぉ!!あっはっはあ!!!」
ガシャンっ 弾達の後方の建物の屋上から何か壊れる男が聞こえた。そして、何かが落ちる音がした。ソトーが振り返ると、そこにはみる影もないタグの死体が落ちていた。それをみた瞬間にソトーの血の気が引いたのだ。これまでの態度が鳴りを潜め硬直した。
ソトー「……!タグ……!」
弾はゆっくり腰を下ろし女児を降ろした。
弾「お嬢ちゃん、君は早くあっちへ逃げな」
弾は腫れ上がった顔で精一杯の笑顔を見せた。女児は少し怖がりながらも小さくお礼を言って去っていった。
弾「…これから起こることを見せるわけにはいかねぇからな!!覚悟しろよこのゲス野郎っっっ!!!」
ソトー「ゆ、許してく…」
ソトーの命乞いをする時間も与えず、ソトーが見たのは自分の顔に弾の拳が迫っていたことだけである。
弾「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!!!!!!!!」
まるで手が何本にも増えたかのように錯覚するほどの連打でソトーを殴り飛ばした。
飛ばされた先にはタグの死体が転がっていた。弾は乱れるリーゼントを取り出した櫛で整えた。
弾「これでツケは返したぜ…ごふぉ!」
弾は血を吐き倒れてしまった。ソトーから受けた傷が悪化したのだ。そこへ駆けつけた遊と鑑時。
遊「弾!待っていろ。『アンタチャブル・ヒール』」
遊は右手を弾に当てた。すると黄緑色に発光して、血だらけの弾の身体が少しずつ無くなっていた。
遊のスキル『アンタチャブル・ヒール』は手で触れた半径1mの範囲のものをなおすのだ。有機質無機物問わない修復能力だが、1分経つごとに修復できる範囲が狭まっていく。なので、この場合は弾は何分も殴られて傷を負っていたため、完治させることは出来ないのだ。しかし、先程より回復し弾は目を開けた。
弾「うっ…!」
遊「目を覚ましたか弾」
弾「へへっ、治しきってくれよ」




