page.19 この男、聖者にあらず 2
弾「まさか…お前っ!」
ソトー「そうだ、俺がくらう攻撃は他の奴に肩代わりさせるんだ…!」
周りは悲鳴と逃げ回る民衆で慌ただしかった。ソトーは少し焦った顔をしていたが、徐々に落ち着いていき再び余裕の表情をしていた。
弾はみぞおちに撃ち込んだ右こぶしを見つめた。
弾「…」
ソトー「はっはっはっ!どうだ?これでお前達は俺には手が出せねぇ!」
遊「なんて趣味の悪い能力だ…!弾、少し下がれ!」
遊は弾をソトーから離して作戦を考えるつもりだった。だが、ソトーはそれを許さなかった。
ソトー「いいや!お前はここで釘付けだ!!」
ソトーは弾を指差しそこから動かないように命令した。ソトーは服からメリケンサックを取り出して自身の指にはめた。その拳で自分の右頬を思いっきり殴った。端から見れば自傷行為であるが、ソトーの顔は無傷で近くにいる通行人Cの右頬がくしゃ曲がり血を吐いた。
通行人C「ああぁ!!おれ、の、顔がぁ!?」
弾「てめぇ…」
ソトー「まずはお前からだ、なんだかお前は気に障る」
ソトーはゆっくり弾に近づき、右の拳を弾の顔面に撃ち込んだ。しかし、弾はそれを止めた。
弾「なんだこの鈍いパンチは?」
ソトー「おいおい、なに止めてんだよ?まだ状況が分かってないようだな」
ソトーは今度は自分の左腕を殴った。すると、また別の通行人が左腕を負傷した。
ソトー「お前はこれから、この俺のサンドバッグになるんだよ!!死ぬまでな…!」
趣味の悪い笑い声を上げて愉悦に浸っているかのようであった。遊は虫酸が走る気持ちを押さえて大声で避難を促した。
遊「ここにいる者達は早く立ち去れ!」
その言葉に民衆はその場から逃げ出した。その時のソトーの表情に、遊は何か違和感を感じていた。
遊「(この男、身代わりがいなくなるこの状況でなぜ動揺しない…それに、最初の弾の攻撃は確かにくらったリアクションをした。しかし、それ以降はダメージを受けている様子がない…)」
ソトー「おーおー、愚民が逃げてく逃げてく」
ソトーは面白半分で連続で自分の身体を殴った。それにより、逃げている最中の民衆の何人かが痛み悶えた。
弾「てめぇは…お仕置きが必要みたいだなぁ!?」
この光景に、ついに弾は堪忍袋の緒が切れた。その形相に、ソトーは少し汗をかいたが余裕の表情を崩さなかった。
弾「遊!こいつの能力の正体分かったか?」
弾はソトーから目を離さず、大声で遊に聞いた。遊は少し考えて口を開いた。
遊「大まかな見当はついているが、確証を得るまでに時間が必要だ」
弾「なら、その確証をさっさと掴んでこい!こいつの相手は俺1人で十分だっ!!」
ソトー「このドチビがぁぁ!調子に乗りやがって!!」
ソトーは、歯ぎしりをして渾身の右ストレートを弾の顔面に撃ち込んだ。今度は抵抗せず顔面に受けた弾。血を吐き後ろに飛ばされた。
ソトー「はっはっはっ!気持ちいなぁ!…ん?」
ソトーは砂煙舞う中に立ち上がっている弾を見つけた。
弾「そんなもんかよてめぇのパンチはっ!蚊がぶつかったくらいにしか感じねぇな!」
ソトー「こいつぅ!!」
ブレイブ「はぁはぁはぁ…」
多少の息切れをしているブレイブ。そこに肩を貸してその場から離脱した遊。
遊「大丈夫か?なにか持病でもあるのか?」
ブレイブ「…ちょっとした病気みたいなものだ…だいぶ治まってきた」
弾がソトーに殴られて砂煙が舞った瞬間にブレイブを連れて建物の影に隠れたのだ。
ブレイブ「それより、仲間を置き去りにして大丈夫なのか?」
遊「まだ短い付き合いだが、これくらいでは死なない奴なことは理解できている」
ブレイブ「そうか…」
遊「さて…どうやって見つけ出すか」
遊は指で顎を擦った。
ブレイブ「ソトーとかいう魔族の能力が分かったのか?」
遊「まだ仮説だがな…おそらくあの場にいるのはアイツだけではない。もう1人いるのだろう」
ブレイブ「なに?」
遊「最初の弾の攻撃で奴はダメージがあった。しかし、それ以降はない。その違いは不意打ちだったかどうかだろう。おそらく、もう1人の仲間の能力を発動するのが遅れてしまいくらったと考えれば辻褄があう」
ブレイブ「なら、そいつを見つければ…」
遊「そう。だが、やみくもに探してもダメだ。こういう時に鑑時がいればいくぶんかマシなんだが」
ブレイブ「人探しなら俺に任せてくれ。だいぶ体調が戻ってきた。役に立つだろう」
遊「人を探せるのか?」
ブレイブ「擬似的に、だがな」
ブレイブは、支えてくれてた遊から離れて深く息を吸った。ブレイブにはぼやけているが生体反応がいくつか感じることができた。
ブレイブ「俺たちを除いて、この近くで感じるのは…2人」
遊「2人?しまった、敵は3人もいるのか」
ブレイブ「1人は俺たちに近づいてくる!」
背後に誰かが立つ気配を察知し振り返るブレイブ。足音で誰か分かった遊はふっと鼻で笑う。
遊「まったく、どこをほっつき歩いていたんだ鑑時」
鑑時と呼ばれる男は、身長190cmはあるほどで筋骨隆々の体格だ。スキンヘッドにして法衣と袈裟を着こなし、両手を合わせ数珠を持っているいわゆるお坊さんスタイルだ。
鑑時「迷っていた」
ティターニア・F・ローズ(19)
魔王に仕える父を持つ後に革命の淑女と呼ばれる才女。
物心つく頃から人間族と魔族の関係に憤りを感じている。
将来を約束した婚約者がいたと噂されている。




