第2章 個人ランクAの指南【2】
冒険者ギルドでは、当然にリーフェットが依頼を決める。いまの彼らに任せていては、またランクCの依頼を選び兼ねない。そもそも、冒険者ギルドにおいて受ける依頼は自パーティよりひとつ下のランクというのが一般的だ。無理なく達成する。それが冒険者界の常識なのだ。
「今回はこれね」
リーフェットは依頼書を手に取り、受付カウンターの女性に差し出す。この町に来てから友人になった職員のアンネリカだ。
「はーい、受付完了よ。気を付けていってらっしゃ~い」
「さ、行くわよ」
受付の判子が捺された依頼書を受け取り、リーフェットは冒険者ギルドを出る。それに続いたライカが、駆け足になりながら言った。
「今回はなんの依頼を受けたんですか?」
「これよ」
リーフェットはライカの目の前に依頼書を突き付ける。他の三人もそれを覗き込むと、ダンが顔をしかめて声を上げた。
「グリーンウォンバットの討伐!?」
「それもたった十五体?」
ヴェラも不満そうな表情になるので、リーフェットは何度目かわからない溜め息を落とした。
「ポケットラットも討伐できなかったくせに、その文句が通るとは思わないでちょうだい」
彼らはまだ、自分たちの実力を過大評価している。昨日のポケットラット討伐を自分たちで完了することができなかったことは、都合良く忘れているらしい。ポケットラットとグリーンウォンバットは同等ランクの魔獣で、ギミックバットと合わせて最下位御三家と呼ばれている。討伐できなければ話にならないのだ。
そう、話にならないのだ。
勇者パーティ候補の四人が、グリーンウォンバットを追い駆けて息を切らせている。攻略に出てから、すでに十五分が経っている。それでもたった三体しか討伐していない。リーフェットは溜め息が止まらなかった。
「集合!」
リーフェットが軽く手を挙げると、四人は肩で息をしながら彼女のもとに集まる。これが勇者パーティ候補から外されていないのがリーフェットには信じられなかった。
「あなたたち、連携というものを知らないの?」
四人は息も絶え絶えで、返事をすることもできない。もしくは、返す言葉がないのかもしれない。
「動きの素早い魔物を倒すには、まず魔法使いがそれに追い付くために速力強化の魔法をかける。従魔術士は従魔を使って索敵、すぐ前衛に指示を出す。指揮を執ると言ってもいいわ。前衛は索敵をもとに素早く討伐。とにかくこれの繰り返しよ。グリーンウォンバットのような斬撃が効く魔獣はこれが基本的な戦術になるわ。わかった?」
「はっ、はい!」
早口で捲し立てたリーフェットに、四人は姿勢を正して返事をする。返事だけはいいのだが、とリーフェットはまた溜め息を落とした。
リーフェットのもとでライカの回復魔法を受けたあと、四人はまたグリーンウォンバットの討伐に向かう。グリーンウォンバットが最下位御三家と呼ばれる理由のひとつに「のん気」という特性がある。グリーンウォンバットは、周囲で人間が暴れていても逃げないのだ。よほど賢い個体でなければ、自分たちの敵であることに気付かない。だからこそ、これほど苦戦してしまっては話にならないのだ。
それでも、四人がコツを掴むのは早かった。たった三体に十五分かかっていた四人だが、残りの十二体はニ十分ほどで討伐完了した。それでも、リーフェットから見れば時間がかかりすぎである。




