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世界最強の元一般人――異世界ラノベの主人公に憧れた俺、最強でも現実は甘くなかった  作者: ITIRiN
第6章:王の顔と、隠しきれない素顔

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第71話:三月七日

セリアが俺の口元を拭いてくれたせいで、残りのホットケーキを食べ終わるまで、ずっとどこからか肌を刺すような視線を感じていた。もちろん誰がそんなことをしているのかは分かっているのでどうでもいいのだが、どういうわけかマイカが時々羨ましそうな顔をしていたのが少し気になる。……まあ、俺の勘違いかもしれないけど。


「なに難しそうな顔してるのよ。子供には似合わないわよ」


「言っておくけど、俺は今年で22歳なんだからな! ミナとリアよりも年上なんだぞ!」


「そのミナちゃんに抱っこされながら、しかもそんなに可愛らしい声で言われてもね~」


そう。今の俺は母さんの言う通り、ミナの膝の上に座らされているだけでなく、しっかり抱っこまでされている。


ちなみに今、子供達とエメさんは片付け中だが、流石にそこまで母さんにやらせるわけにはいかないということで、俺達と一緒に居間で食後のティータイム中である。うちは食洗機もあるし、使った食器はサッと水で流すだけでいいんだけど。


「そういえば、アベルがいない理由はさっき聞いたから知っているが……息子のところで雇っている、あの優秀な執事――セレスはどこにいるんだ?」


「言われてみれば、確かに今日はまだ一度も見ていませんね。前に来た時は必ずいたような気がしたのですが」


「ああ、セレスさんなら今はアベルの代わりに騎士団にいるぞ。というか最近は人手が足りないって理由もあって、主に経理関係の仕事をしてもらってたりするんだけど……やっぱ勿体ないかな?」


この城内はかなり広いが、便利にしてあるのでそこまで人手は要らない。だからセレスさんには経理を任せたり、戦闘力の高さを活かして騎士団や警備班に回ってもらったりしている。


経理に関してはミナが直接お願いしただけあってかなり有能だし、報告書によると騎士団では戦闘から事務仕事まで何でも教えてくれるため、かなり人気があるらしい。


一応、仕事がハードなのは分かっているので土日は完全に休みにしているが、そういう日はよく子供達を連れて散歩に行っているそうだ。


「ですがご主人様は、基本なんでも自分一人でやろうといたしますし、掃除やお料理に関しては私達で足りておりますので……今までしてこなかったお仕事をする、という意味では良い気分転換になるのではないでしょうか。別に、向いていないお仕事をお願いしているわけでもありませんし」


「セレスのやつなら、経理はどうか知らんが、騎士団の仕事は結構気に入っておるようじゃぞ。その証拠に、アベルはもちろん、うちの兵達と模擬戦をしておる時はかなり楽しそうじゃからのう」


えっ、あのお爺ちゃん、実は戦闘狂だったの?

確かに強いってのは聞いてたけど、アベルとも模擬戦が出来るとかマジかよ。


「そうだ! ねえソウ君、ソウ君。私達の家は結納金の代わりに、ここのキッチンと同じ設備をあっちのお城にも欲しいんだけど……駄目?」


「いや、そもそも結納金って自分からねだるものじゃねえだろ。それに俺達の婚約を発表するにはまず、俺が国王にならなきゃ始まらないってミナが―――」


「あっ、そうだそうだ。危なく忘れるところだった。息子とミナ達の婚約については、お前の国王宣言と同時にすることにしたから、よろしく頼んだぞ」


「はあ?」


あまりにも予想外だったせいで、間抜けな……しかもショタ声で返事をしてしまった。その瞬間、「可愛い~♡」なんて声が周囲から上がったが、全部無視だ。


「始めは私達もかなり時間が掛かると思っていたのですが……例の爆発事件の様子や、その後の映像のおかげで、貴族の方々を納得させるには十分な材料になりました。その代わり、今度はソウジ殿の“人としての魅力”に気付いた方々が『うちの娘も是非』という話をし始めていますが」


「どうせそんな奴、ほんの一部だろ。別にどっちにしろいらないけど」


その独り言を、お母さんはしっかり聞き逃さなかった。


「貴方達、よくこの子を落とせたわね。今後ソウジが自分のお嫁さんとして認める人が、どんな子なのか凄く興味があるんだけど」


「というか、そんな子いるの? 贔屓目なしに見ても、うちにいる貴族の娘さん達って、容姿はもちろん性格まで完璧な子も結構いるのに、この反応よ。しかもソウ君は、そのうちの何人かと既に面識があるし」


そういえば二度目のマリノ王国訪問の時、何人かとすれ違ったな。母さんが軽く紹介してくれたが……正直あまり覚えていない。確かに全員可愛かった気はするけど、どんな顔だったっけ?


「その様子だと、覚えていないようだな……。はあ、我々は今から、その方達にお断り……というか、息子の気持ちを代わりに伝えて、納得させなければいけないというのに」


「なんだ、もう帰るのか?」


「先ほど陛下も仰いましたが、私達はこれから、ソウジ殿の建国・国王宣言の日までに、一部の貴族を納得させなければなりませんからね。……まあ、これも貴方のお義父さんとしての仕事の一つですよ」


「ねえ、今いい感じの話をしてたけどさ……なんか俺の知らない情報が一つ入ってたんだけど⁉」


俺の疑問を完全に無視した二人は立ち上がり、子供達に挨拶をするとそのままドアへ向かった。


「今日は、わらわが二人を見送ろうかの」


「おい、ちょっと待て‼ 帰る前に宣言云々の説明をしてから帰れ! おいゴラッ! ニコニコしながら後ろ向いて歩いてんじゃねえぞ‼」


どうにかしてミナの抱っこから脱出しようとしたが、体が小さいせいで上手く力が入らない。


仕方なく玄関へ転移して先回りしようとしたのだが、いつもの感覚で魔法を使ったはずなのに、何故かソファー席から二メートル程離れた空中に投げ出された状態になってしまい――


「突然、変な遊びを始めないでください、ご主人様」


「あっぶねえー。リアがキャッチしてくれなかったら、マジで落ちるところだった」


……落ちそうになった瞬間、飛行魔法を使おうとしたのに、何故か反応しなかった。


「わらわがお主を小さくする時は、大抵、勝手に動かれたくない時じゃからのう。ちと使える魔力量を少なめにしておるのじゃ。ということで、今後は気を付けるんじゃぞ。それと、別に魔力を使い切ったわけではないから、魔力枯渇による体調不良はないはずじゃ」


「ああ゛っ⁉ 勝手に人の魔法を悪用してんじゃねえぞ!」


……俺の魔法って、そんな使い方も出来るのかよ。

あいつ、頭いいな。


気付けば、今度はリアの膝の上で抱っこされていた。


「―――、――君」


背中越しに伝わるリアの体温が、ミナとはまた違って落ち着く。……いや、でもミナもそれはそれで落ち着くし。どっちも反則だろ。


「――君、ソウ君、ソウ君!」


「ふえっ? えっ、あっ、何?」


「も~う、やっと気付いた。……それより聞きたいことがあるんだけど、さっきの『勝手に人の魔法を悪用してんじゃねえぞ!』って、どういう意味なのか、ママに教えてほしいな~」


何がママだよ。

逆に俺は、“宣言云々”の説明をしてほしいっつうの。


「私も、その件については気になるのだけど……その前に、この国の建国とソウジの国王宣言についてなのだけど、これには私と夫も出席するわよ。というか、主に私の夫が進行というか……司会みたいなものもやる予定だから、そこら辺は別に準備しなくてもいいわ。あと日程についてだけど、今のところは一週間後。

――三月七日。

その日、この国は正式に建国される。

そして貴方は、王になる。

それまでに何か用意しておきたいものがあるなら、ちゃんと準備を進めておくこと。分かった?」


心臓が、一瞬だけ強く跳ねた。


「分かるわけないだろ‼」

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