第十三章 真犯人
第十三章 真犯人
早速、神尾編集長も現れた。
開口一番、
「孝ちゃんも、まだまだ、だな……」
「叔父さん、一体、何を言っているんですか?」
「私が、小型の盗聴器に気が付かなかったとでも思っているのかい。先ほどの話は、甥の孝ちゃんが気が付くかどうか、私の、迫真の演技なんだよ」
「では、黒魔術の秘密結社『黒い不死鳥団』は作り話だとでも言うのですか?」
「当たり前だ、21世紀にもなって、黒魔術を信じている馬鹿が、何処にいると言うのだ!大体、その話を、誰から、聞いたのか、よく思い出してみるがいい……」
「そう言えば、Q大学の先輩のルポライターの五島睦夫氏から、聞いたように思いますが……」
「よく、考えてみれば直ぐに分かる事でもあるのだが、彼はフリーのライターで、特に、オカルトやホラー物で、本を出して飯を喰っている人間だ。
この『女子高生・生体解剖殺人事件』等を特集して、既に、数冊の本も書いている。
一番、この狂気の事件で、得をするのは、一体、誰かね?」
「じゃ、叔父さんは、五島睦夫氏が、この事件の黒幕だと言うんですね」
「そうだ。直接にも、間接的にも、彼が、関わった事は、ハッキリしている。
この高崎医師などは、本気で、金田少年の治療に取り組んだらしいが、あの狂気の事件は起きてしまった。
全てが、五島睦夫の創作に合うように、物語は進んで行ったのだ」
「でも、分からない事が、一つだけあります。
叔父さんは、何故、盗聴されている事まで知りながら、あんな、迫真の演技をしてまで、甥のこの僕を、騙そうとしたのです?僕には、これだけは、理解出来ません」
「孝ちゃんに、一人前の、新聞記者になってもらって、将来は、この私をも超えてほしかったからだよ。それ以上でも、それ以下でも無い。
まあ、グダグダ言って無いで、警察に出し抜かれる前に、スクープ記事の執筆に取りかかる事が先決だ!」
「書き上げたら、真っ先に、私の所に、メールで送ってくれ。
世間が、あっと、驚くだろう。大スクープになるよ」、そう言って、叔父さんは、ニヤリと笑った。
「さすが、T大卒は違うなあ」と、神尾雄一は舌を巻いた。
了




