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魔王化儀式③

 記憶が読まれている。

 カシムはギリッと奥歯を噛んだ。


 依然として頭の中で声だけが響いている。

 この一つ前の魔王はとても饒舌だ。

 楽しげに喋っている間になんとか出る方法を考えなければ。


『久しぶりの客だ。お喋りを楽しもうぜぇ』


「そうだな、私もお前とお喋りがしたいところだ」



 ------



 カシムが魔法陣に入ってからどのくらいが経っただろうか。

 二人は広間で光の塊を見ている。


 すると、今まで白の光だったのが次第に赤黒く染まっていく。


「チネハ!これって……」


「何か様子がおかしいわね!お嬢ちゃん、油断しないでね」


 赤黒い塊はドクドクと脈打つような音を放つ。

 まるで心臓の鼓動のようだ。

 もし失敗であれば、この塊はその内消滅するだろう。

 消滅しないのであれば、魔王になる為の変異なのだろうか。


 色々思考を巡らすが答えは出ない。

 何も出来ないのが歯痒く感じた。


 すると、どこからともなく風が舞い込んできた。

 この広間には窓はないし、扉も閉められている。

 この違和感にリリアムとチネハは周囲に異変がないか確認する。



「あれれー?なんだか面白い事になってるね、ドロッセル」


「本当ね。来てよかったわ、ヨハン」



 突如、頭上から男女の声が降ってきた。

 見上げると黒を基調とした服を纏った悪魔が楽しそうに浮いていた。


「あなた達は…!!」


「あら?あの時の女の子じゃない。

 やっほー、元気にしてた?」


 女は笑顔で手をひらひらと振った。

 チネハは知り合いなのか聞こうと隣を見たが、リリアムが明らかに警戒をしているのを感じ、敵と認識する。


「何しにきたの?」


「そんなに警戒しないでよ。

 今はまだ何もするつもりはないからさ」


「そうよ。凄い魔力を感じたから見にきたの。ただそれだけよ」


 確かに今のところ殺気や敵意を感じない。

 しかし、獣人の国でのことを思い出すといつ襲ってきてもおかしくはない。

 チネハにも念話でこの二人について伝える。


 警戒をしながら、四人で塊を見守る。

 しかし赤黒くなってからというもの何も変化のない状況にこの男女は段々と飽きてきているようだ。


「ねぇねぇ、この赤黒い塊は何?」


「そんなの教えるわけないじゃない」


「えー、さっきから見てても何も起きないからつまらないわ。

 あ、この塊壊したらどうなるのか、ヨハン見てみたくない?」


「わぁー!見たーい!!」


 やばい!このままではカシムごと壊されてしまうと思い、リリアムは咄嗟に口を出す。


「こ、この塊は凄いものが生まれる卵なのよ!今壊したら、凄いものが見られなくなるよ!」


 男女はキョトンとした顔をして互いを見る。

 少女は彼等の気が変わるのを待った。


「凄いもの…ねぇ。ヨハンどう思う?」


「んー。その凄いものが何なのか見てみたいかも」


「私もそう思うわ。

 でも生まれたものが凄くなかったら、お嬢さんを私達のおもちゃにしちゃいましょう」


「名案だね!ドロッセル!」


 とりあえず、現状維持となりどっと疲れが出る。

 あれから何時間か経っているが変化がない。

 早いところ戻ってきてもらわないとこの悪魔二人が何をしでかすかわからない。



(カシム!早く戻ってきて…!)



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