魔王化儀式②
「出来た!」
カシムは垂れる汗を拭い、地面を見下ろす。
複雑な形をした魔法陣が完成したのだ。
膨大な魔力を常に注ぎながら描かないといけなかった為、その疲労が目に見えてわかる。
「いよいよ……だね」
「ああ。念の為防御壁を張っておけ」
「わかったわ。お嬢ちゃんの事はアタシに任せときなさい。
カシムちゃん、気をつけてね」
「絶対、魔王になって帰ってきてね」
「勿論だ。………行ってくる」
リリアムとチネハは互いが互いを守れる様に防御壁を二重構造にして展開する。
それを確認するとカシムは魔法陣の中へと入っていった。
すると淡い光だった魔法陣が突如として凄まじい光を放ちカシムを飲み込む。
あまりの閃光に二人は手で目を覆った。
しばらくすると徐々に光がおさまり、目を開けられる様になった。
魔法陣の方を見ると、空中に巨大な光の塊がある。
この中で魔王になる為の選別が行われているのだろう。
今は待つしかない。
二人は祈る気持ちで光の塊を見つめた。
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「うっ……ここは?」
何もない白の空間。
今自分が地面に立っているのか、浮いているのかさえわからない。
平衡感覚がおかしくなりそうだ。
魔法陣に入った後急激な眠気が襲い、気が付いたらこの場所にいた。
魔王になる為の適正選別が来る事は間違いない。
油断せずに身構える。
すると頭の中で声が聞こえ始めた。
『コレヨリ、魔王資格ノ有無ヲ確認スル。
魔力…適正、力…適正、知識…条件付きニテ適正、仲間…適正、カリスマ性…適正。
総合評価……魔王資格有リ』
拳に力が入り、無意識に顔がニヤける。
『続イテ、魔王ヘノ進化ヲ開始ススススススススススススススススススス………』
声の様子がおかしい。
しかし、周りを見渡しても身体の調子も特に異常が見られない為どうする事も出来ない。
『マ魔王魔王ヘノシン進化カカカカヲカイカイ開始開始シシシシススス………………ブチッ』
何かを潰すような音が聞こえた。
そこからはしばらく静寂が続く。
もしかして、本当は適正が無かったのではと不安がよぎる。
そこからどれくらいの時間が経過しただろう。
また声が聞こえ始めた。
しかし、先程の声とは明らかに違う。
「笑ってる?」
小さい声が次第に大きくなっていく。
それと同時に一面白だった空間が赤黒く染まっていった。
『フハハハハハ!!!やったぞ!繋がった!!
感謝するぞ!お前のような奴二度と現れないと思っていたからなぁ!』
「お前は誰だ」
『クク、俺かぁ?そうだなぁ、一つ前の魔王と言えばわかるか?』
「……っ!!一つ前の魔王だと?」
この世界で知らないものはいない。
数千年前、破壊と暴虐の限りを尽くし、異世界から呼び出された勇者によって倒されたと聞いていた。
その魔王が何故生きている。
『何故生きているという顔をしているなぁ。ククク、当然だろうな。
あの時は倒されたのではない、封印されたのだ。
忌々しい聖女によってな』
「聖女……」
聖女といえば、少し前に依頼された村にいたリリアムの双子の姉が聖女と呼ばれていた。
『大方、勇者だけじゃ倒しきれなかったからだろうよ。
そういえば貴様は聖女と知り合いなんだなぁ。ククク、助かるぜぇ。
それにドラコとも懇意にしてるみてぇだな』
「どうしてそれを!」
『当たり前だろ。今ここは俺のテリトリー。
貴様の記憶なんぞ手に取るようにわかるぜ』




