聖なる村⑥
「聖女様、そろそろ清めの時間です」
村長が支度をする様に促す。
アイリヤは明るく返事をし、使用する道具の確認を始めた。
その最中、思わず笑みが溢れる。
まさか、自分の妹が生きていたなんて。
まだアイリヤが幼かった頃、毎年いつも決まった日に村長と父母が出掛けるのを見送っていた。
しかし、どこに行くのかを聞いても教えてくれなかった。
そこで、こっそりついて行こうと思い立つ。
まずは石碑に魔力を込める際、隠蔽魔法の仕組みを解析し、アレンジを加え練習を重ねた。
そうすれば、堂々と後ろを歩いても気づかれないと考えたからだ。
そして十歳の時、計画を実行に移した。
散々練習をしたので、面白いほど存在がバレない。
遠足気分でついていくと、やがて魔物の森に来てしまった。
三人は魔除けの護りを持っているが、自分は持っていない。
もし、魔物が出たら襲われてしまうのではないかと内心ビクビクした。
それでも好奇心の方が勝っていた為、三人が目的地に到着するまで一緒に歩いた。
突然、何も無いところでピタリと止まった。
近くには木があるだけだ。
母が手提げから花を取り出し、木の前に置いた。
父は食べ物を同じ様に置く。
そして祈りを捧げながら、村長が鎮魂の唄を歌った。
鎮魂の唄は通常誰かが亡くなった時に墓前で歌うものだ。
ここには何もないのに、なんで歌っているんだろうと思った。
そして三人は口々に鎮魂の唄を捧げた者に対して話し始めた。
あれから十年か。
アイリヤと一緒に育てられなくてごめんね。
生きていたら村で評判の双子姉妹になっていたんじゃないか。
アイリヤは人を惹きつける子だからね。
妹のこの子もそうなったかも。
掟さえなければ。
声が出そうになった。
それ程までにアイリヤにとっては衝撃的な内容だったのだ。
自分に双子の妹がいただなんて!
しかし内容を聞く限り、産まれてすぐこの場所に捨てられたらしい。
酷く憤りと理不尽さを感じたが、逆の立場で考えたら自分も同じ事をしてしまうかもと思った。
同時に捨てられたのが自分じゃなくて良かったとも。
それ以来、亡き妹を思っていつもこっそりと同行をしていた。
連れ去られ救出された時、カシムという男から自分にそっくりな少女が聖女と誤解されて困っていると聞かされた。
世の中には自分と似ている人間が三人はいると言われているからどれ程似ているのか興味があった。
そして、いざ会ってみてすぐにわかった。
ああ、この子は紛れもなく私の妹だ。
通常魔力の形は一人一人全く違うが、その少女は自分とほぼ同じだったのだ。
喜びのあまり、すぐに連れ出した。
しかし、この子にはこの子の生活があるのだと心に言い聞かせ、誰にもバレない様に他人を装った。
笑顔を向けてくれる妹に本当は全てを話したかった。
また会えたら良いな。
別れ際、そう思った。
支度を終え、泉へと向かう。
村長が既に待っていた。
「聖女様、お待ちしておりました。
数千年前とはいえ、いつ魔王が復活してもおかしくありません。
身体を清め、封印と勇者召喚の神聖な儀式が行える様励んでください」
「何度も聞いてるからわかってるよ、村長」




