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聖なる村⑤

「……ん。……あなたは誰?」


 まだ意識が朦朧としているのか、聖女は寝言の様に呟いた。


「私はカシムと言う。今、お前の村に向かっている」


「……そう……」


 聖女は再び眠りについた。

 スゥスゥと寝息をたてているのを見ていると、ますますリリアムに見えてくる。


 カシムは先を急いだ。




 村に到着すると、村人達は驚き村長を呼びに行ってしまった。

 その頃には聖女は目を覚まし、カシムから事の経緯を聞いていた。


 やがて村長とリリアム、聖女の父母が二人の前までやってきた。

 村長達は聖女とリリアムを見比べ驚いている様だ。

 それは二人の少女とて同じであった。


「はじめまして、私はアイリヤと言います。あなたは?」


「わ、私はリリアムです。ホント、私とそっくりですね」


「ねぇ、向こうで少しお喋りしませんか?良いよね、村長」


 村長が頷くと、アイリヤはリリアムを引っ張って家の方へと走っていってしまった。




「なんとお詫びを言ったら良いか。私どもの早とちりでお二方にはご迷惑をお掛けしました」


 聖女本人を連れてきた事により、村長達の誤解は無事にとけた。

 その割には複雑な表情をしている。


「カシム殿、老人の戯言だと思って昔話を聞いてはくれませんか?」


 リリアムは聖女と行ってしまってしばらくは戻ってこないだろう。

 他にする事もないし、話を聞く事にした。




 この村では産まれた聖女を大事に育てる為に、とある言い伝えがある。

 それは……。


【聖女が産まれた家では他に子を育ててはいけない。破れば、災いが起きるだろう】


 なので、当然聖女は一人っ子にならなければいけなかった。


 しかし、今回の聖女は双子として産まれてきてしまった。

 どちらも莫大な魔力を内に秘めていた。

 だが、言い伝えを守る為にどちらかを選ばねばならなかった。


 散々悩んだ末、先に取り上げた方を聖女として育て、もう一人の方はすぐに処分する事に決まった。


 双子の父母はとても悲しんだ。

 なんとか二人とも育てられないかと懇願したが、どうにもならなかった。


 翌朝、双子の父は魔除けの護りを携え、赤ん坊を村長の指示の元、魔族領の森へとそっと置いた。

 ここであれば、人間に被害が及ぶ事はないと思ったからだ。

 その時赤ん坊はこちらに笑いかけ、手を伸ばしてきた。

 双子の父はグッと堪え、その場を後にした。



「まさか、生きていたとは。あなたが拾って育てたのですか?」


「そうだ。私にはあれが必要だったからな」


 それを聞いた聖女の母は泣き崩れた。

 老人と男性も歯を食いしばり俯いている。


「聖女様は自分が双子だったという事を知りませぬ。どうか、他言無用でお願いします」


「わかった」




 しばらくするとリリアムが戻ってきた。

 聖女とのお喋りはとても楽しかったらしい。

 名残惜しんでいたが、村を出る事にした。


「あの謎のオブジェ、あれって魔力の放出を妨害する為に置いてあるんだってさ」


「そうか」


「あれが無いと赤ちゃんの時とか無意識に出ちゃうから周りがめちゃくちゃになっちゃうんだって」


「そうか」


「なんだかカシムが私を拾った時みたいだよね」


「そうか」


「もー!!そうかそうかって話ちゃんと聞いてるの?!」


「聞いてる」


 リリアムの楽しそうな声が森にこだました。

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