聖なる村③
リリアムが連れて行かれた後、お礼がしたいと老人の家へ案内された。
木をふんだんに使用した内装に、小さめの謎のオブジェが置いてある。
椅子に座ると、緑色の飲み物が出てきた。
カシムは初めて見る物に少し動揺するが、老人もそれを啜っているので同じ様に飲んでみる。
苦い……。
今まで味わった事のない飲み物に対し、思わず眉をひそめた。
「お口に合いませんでしたかな?これはこの辺で取れる薬草を乾燥させ煎じたお茶でございます」
カシムはお茶をじっと見つめ、静かにテーブルに置いた。
「改めまして、私はこの村の村長をやっております。聖女様を見つけてくださりありがとうございました」
「この手紙はお前が出したのか?」
懐に入れていた手紙をテーブルの上に置く。
村長はそれを確認し、そうですと同意した。
毎月定期的に隠蔽魔法を張り直す為、聖女は村を囲っている石碑に魔力を込める役割を持っている。
ただ、石碑は大量の魔力を吸い取ってしまうので、聖女には生まれつき魔力の高い子が選ばれ、その子が担っている。
「その聖女様が石碑に行ったきり、行方がわからなくなっていたのです」
「そもそも何故隠蔽魔法が必要なんだ?」
この村は代々、とある秘術を継承しており、それが外界に知られない様にひっそりと暮らしている。
村の存在を知っているのは、各国の国王のみとの事だ。
因みに秘術を使用する際も聖女の力が必要となる為、村でその資格のある女児が産まれた際には大事に大事に育てられる。
「その秘術とはどういったものなんだ?」
「申し訳ありませんが、流石にそれをお話する事は出来ません」
「では、何でも屋の存在は何処で?」
村長はギズベリン王国の王から聞いたと答えた。
聖女が行方不明になり、すぐに定期的にやり取りをしている王に相談した。
すると、自分も世話になったと何でも屋を紹介されたのだ。
王の紹介とはいえ、半信半疑だったので依頼の手紙をあの様な形式にして試す事にしたらしい。
「しかし、依頼をお伝えする前に聖女様をお連れしてくださるとは…」
確かにリリアムは魔力量が多いから聖女の資格があるといってもいいだろう。
だが、それでは魔王になることが出来なくなってしまう。
それにしても……。
「聖女はずっとこの村で暮らしていたのか?」
「ええ、聖女様は生まれも育ちもこの村でございます。小さい頃は私も遊び相手をしておりました」
もしかしたら、聖女とリリアムは瓜二つなのかもしれない。
でなければ、この様な間違いが起きるはずがない。
しばらく村長から話を聞いていたが、やはり行方不明の聖女を探す他にリリアムを返してもらえる手立てが無さそうだ。
手掛かりはほぼ無いが、背に腹はかえられぬと聖女を探す事にした。
たとえ死んでいようが、リリアムがこの村の聖女ではないという証拠として連れてこなければならない。
少しでも手掛かりを見つける為、カシムは石碑へと向かった。




