仲間?③
気がつくとベッドに寝かされていた。
見覚えのない部屋。
空いている窓から入り込む風が気持ち良い。
「ああ、気が付いたんだね」
手に食事を持った女性が部屋の入口に立っていた。
そのまま、チネハに近づきテーブルの上に置いた。
白い湯気がたち、優しい匂いがする。
彼女はどうぞと言った。
お腹の虫が鳴くと同時に差し出された物に手をつける。
自分でも驚く程がっついているのがわかつた。
自然と涙が溢れてくる。
「美味しい……」
「当たり前でしょ、私が作ったんだから」
彼女はニコッと笑った。
彼女は一階でカフェをやっているらしい。
最近ようやく軌道にのってきたとのことだ。
その為、少し人手不足と言っていた。
なのでお礼も兼ねて手伝いを申し出た。
多分善行になると思ったからだ。
ところが断られてしまった。
そんなつもりで助けたんじゃないと。
前だったら、気にせず礼も言わずここを出て行ったかもしれないが、今は彼女の優しさに報いたいと思った。
これも呪いの力なのかと苦笑した。
最初は渋っていたものの、諦めずにいたら、接客を任せてくれる事になった。
とはいえ、やり方がわからないので一から教えてもらった。
皿を落としたり、運ぶ先を間違えたりとヘマばかりしていたが、彼女はなんだかんだ笑って許してくれた。
そしていつの間にか呪いについて考えなくなっていった。
彼女と一緒であれば、自然と善行が出来ていたんだと思う。
「そして今に至るってわけよ。泣ける話でしょ?」
そんな事になっていたなんて。
なんて返して良いかわからなかった。
それと同時にあんな酷い事をしていたんだから当然の報いだとも思った。
「最初はアンタ達を恨みもしたわぁ。でも今となっては気にならなくなっちゃったのよねぇ。寧ろ感謝しちゃってるのかもしれない。
それに良い事をしようと自然と身体が動いちゃうの、悪魔として失格だわぁ」
そういう割にはなんだか楽しそうだった。
「ただね、そろそろ潮時かなって思うのよ」
「どういう事?」
「だって、いつまで経っても歳を取らない人間なんておかしいでしょ?少しずつ老けていく魔法なんて難しくて使えないし」
「…………」
「だからアタシ、アンタ達についていく事にしたわ」
……………っ!!!!????
突然の決意表明に少女はお茶を吹き出した。
カシムもなんとも言えない表情を浮かべている。
「いいじゃないのぉ!アンタ達、仲間を探してるんでしょ?アタシが仲間になってあげるわよ」
ん〜まっ♡と投げキスをされた。
それを俊敏な動きで避けた。
「……彼女の事はいいの?」
「ええ、やりたい事が見つかったらいつでも辞めていいからねって言われているの」
そう言いつつ、名残惜しいのか目を伏せる。
あの時に比べて、随分と人間らしくなったものだ。
それ程までに色んな事を経験してきたのだろう。
悪魔らしくない悪魔が二人。
のんびりとお茶を飲んでいる。
片方は凶悪などと呼ばれていた悪魔。
片方は子供を痛めつけるのが趣味だった悪魔。
悪魔といえど変わるもんなんだなぁと密かに少女は思った。




